不動産売買業務は経営に必要なコストを抑えられるうえに、大きな収益を生み出せるビジネスのひとつです。ただ、賃貸の仲介業務に比べてフローが複雑であり、求められる知識やスキル、事務量も多くなります。
そこで本記事では、不動産売買業務のフローを「元付け」「客付け」に分けて紹介します。不動産売買における仲介のメリット・デメリットや業務に役立つシステムも解説するので、売買業務を始める際の参考にしてください。
不動産売買業務の基礎知識「元付け」と「客付け」について
不動産売買業務は、大きく「元付け」と「客付け」に分けられます。
- 元付け:物件のオーナーから直接依頼を受ける不動産会社のこと
- 客付け:家を買いたい人を見つけ、最適な物件を紹介する不動産会社のこと
それぞれ具体的に解説します。
元付け
元付け(もとづけ)とは、物件のオーナーから直接依頼を受ける不動産会社のことです。「物件を売りたい」と考えているオーナーが不動産会社に依頼し、その依頼された会社が元付け業者となります。
元付け業者はオーナーと相談し、物件の調査や査定などを行います。作成した物件情報を客付け業者に提供することもあれば、自ら買い手を探すこともあります。物件に関する詳細を持っており、管理も担っていることが多いです。客付け業者から連絡を受けた際には、オーナーから預かっている鍵を渡し、内覧に案内します。
客付け
客付け(きゃくづけ)とは、家を買いたい人を見つけて、最適な物件を紹介する不動産会社のことです。また、家を買いたい人から直接依頼を受けている仲介業者のことも客付け業者と呼びます。
客付け業者は、基本的にオーナーと直接やりとりすることはありません。元付け業者に対して買い手を紹介し、不動産取引を進めます。
元付けの業務フロー
不動産業務は、「元付け」「客付け」がうまく連携しあって取引に至ることが一般的です。そのため、不動産業務を始める場合、「元付け」「客付け」のどちらの業務フローもしっかりと把握しておくことが重要となります。
ここではまず、一般的な元付けの業務フローを紹介します。
【元付けの業務フロー】
- 物件の調査・査定
- 媒介契約の締結
- 販売図面の作成
- レインズの登録
- 販売活動の開始
- 内見の案内
各ステップについて解説します。
物件の調査・査定
元付け業者は、まず物件の調査・査定を行います。不動産には、見ただけではわからない問題点や利用上の制限などを抱えている場合があるためです。買い手が安心して購入を検討できるよう、しっかりと物件調査を行います。
具体的には、現地調査や登記簿調査、役所調査などを通して、物件の状態や法律の要件などを詳細に把握します。現地調査に行って査定したあとは、査定価格を明記した不動産査定書を売主に提出するといった流れです。
媒介契約の締結
売買の場合、媒介契約を締結します。媒介契約によって不動産会社とオーナーとの間で、仲介に関する権利や義務、責任などが定められます。
媒介契約の種類は3つです。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
一般媒介契約の場合、オーナーは複数の不動産会社と同時に契約できます。対して、専任媒介契約と専属専任媒介契約は一社とのみ契約が可能であり、レインズの登録やオーナーに対する定期的な活動報告の義務があります。
販売図面の作成
媒介契約を締結したら、「マイソク」などと呼ばれる販売図面を作成します。販売図面には次の記載事項を含めなければなりません。
- 物件種別
- 販売価格
- 物件概要
- 敷地図、建物間取図、
- 周辺地図
- 宅建業者の表示
- 取引態様
など
販売図面は不動産会社間で情報を共有するためのものですが、実務ではお客様に対して広告として使用することもあります。そのため、宅建業法や不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)を遵守して作成することが重要です。
※参考:一般社団法人松山宅建協会|基礎から学ぶ仲介業務スキル
レインズの登録
レインズ(Real Estate Information Network System)とは、不動産流通機構が運営する不動産会社専用のネットワークシステムです。専任媒介契約と専属専任媒介契約の場合、元付け業者は物件情報をレインズに登録することが義務付けられています。
レインズは不動産会社のみがアクセスできるシステムであり、個人での直接利用はできません。レインズに登録されると、物件情報は全国の不動産会社に共有され、客付け業者の営業活動などで利用してもらえるようになります。
販売活動の開始
レインズに物件情報を掲載すると、客付け業者からさまざまなコンタクトがあります。客付け業者に対応しながら、自社でも顧客に物件の紹介ができないか客付け機会を狙っても構いません。
しかし、販売活動を開始しても、すぐに買い手が見つかるとは限らない点には注意してください。販売価格を修正したり、販売方法に工夫を凝らしたりする必要もあります。また、売り手に対して報告や連絡と、販売活動の提案なども積極的に行っていくことが大切です。
内見の案内
買い手が現れると、内見の案内をします。内見は「買い手」と「客付け業者」で行うことが一般的です。
客付け業者が買い手に物件を説明する際には、レインズの情報を参考にすることが多いです。内見の際には、改めてレインズの物件情報に間違いがないか確認しておきましょう。
買い手に購入の意思がある場合、不動産購入申込書に記入、提出してもらい、契約手続きを進めます。このような流れを、購入が決まるまで繰り返すのが一般的な元付け業者の業務フローです。
客付けの業務フロー
次に、客付けの一般的な業務フローを紹介します。
- ヒアリング
- 物件探し
- 物件の内見
- 契約の締結
各ステップについて解説します。
ヒアリング
客付け業者の場合、まずは顧客の要望やニーズをヒアリングします。求める条件や希望する生活スタイル、資金計画など、具体的な要望を詳細に聞き取ります。
顧客との信頼関係を築くためには、積極的に聴く姿勢(アクティブリスニング)を持つことが重要です。顧客が抱える問題や潜在的なニーズを掘り下げることで、より満足度が高い物件の提案が可能になります。
物件探し
物件探しは、基本的にレインズを用いることが一般的です。なぜなら、一般媒介契約を除いて、媒介契約を結んだ元付け業者はレインズに物件情報を掲載しなければならないためです。したがって、一般媒介契約を除き、元付け業者が登録したすべての物件情報がレインズに掲載されています。
買い手の希望する地域や予算、間取り、設備などの条件を考慮し、適切な物件を探します。紹介できそうな物件があれば、元付け業者にコンタクトを取るのが一般的な流れです。
物件の内見
購入希望者から内見を希望された場合は、具体的なスケジュールを決めて現地に案内します。事前に元付け業者や売主と連携を取り、物件の詳細情報を共有してもらい、鍵を一時的に借りることも忘れないようにしましょう。
内見時には、物件が購入希望者の要望やニーズに沿っているかを確認します。購入希望者の懸念点を解消し、疑問点がある場合は元付け業者や売主に確認します。
契約の締結
買い手が物件の購入を決めたら、契約を締結します。買付証明書を買い手に渡し、記入してもらいます。
契約の前には、宅地建物取引士による重要事項の説明が必須です。単に説明するだけでなく、買い手と関係者間で誤解がないようしっかりと理解してもらいましょう。
重要事項の説明が済むと売買契約を締結します。このような流れが、一般的な客付け業者の業務フローです。
不動産売買仲介のメリット
不動産売買の仲介にはさまざまなメリットがあります。ここでは、主なメリットとして以下の3つを紹介します。
- 経営コストを抑えられる
- 高い収益性が期待できる
- 不動産売買に関する知識や経験が身に付く
それぞれ具体的に解説します。
経営コストを抑えられる
不動産売買の仲介は、一般的なビジネスに比べて低コストで始められます。物理的な在庫を持つ必要がなく、在庫管理や保管にかかるコストを削減できるためです。何かを仕入れる必要がないため、売上が少なくても比較的経営を維持しやすいでしょう。
また、オフィスや店舗など事業所の規模を小さく抑えることも可能です。少人数で始めることもでき、賃貸料や人件費などを最小限に抑えられます。
さらに、不動産管理システムを活用すれば、少ない人数でも販売活動や事務作業を効率的に管理できるでしょう。不動産管理システムについては記事の後半で詳しく解説します。
高い収益性が期待できる
不動産売買の仲介は賃貸仲介に比べて、大きな利益を見込むことができます。賃貸仲介における手数料は一般的に家賃の1カ月分程度ですが、不動産売買の仲介では物件価格の一定割合が手数料として得られるため、高額な取引ほど仲介手数料も大きくなります。
不動産売買の仲介で得られる仲介手数料の上限は次のとおりです。
売買価格 | 報酬額 |
200万円以下の金額 | 取引額の5%以内 |
200万円超〜400万円以下の金額 | 取引額の4%以内 |
400万円超の金額 | 取引額の3%以内 |
実際に計算で求めたい場合は、以下の公式を使って計算してください。
売買価格×報酬額+6万円+消費税 |
たとえば、売買価格が4,000万円である場合、仲介手数料は次のとおりです。
4,000万円 × 3% + 6万円 + 消費税(10%)= 138万6,000円 |
138万6,000円を元付け業者と客付け業者で分けることになります。
参考:国土交通省|宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
不動産売買に関する知識や経験が身に付く
不動産売買の仲介では、不動産業界の専門知識と実務経験を深められます。賃貸仲介と比べて取引が複雑であり、一件あたりの取引額も大きく、さまざまなスキルと知識が求められる傾向にあるためです。
たとえば、元付け業者の場合、不動産の評価や市場分析、販売図面・契約書の作成、法律や税の適用など、幅広い業務に関わることになります。
客付け業者の場合でも、顧客との交渉を通じてコミュニケーション能力や問題解決能力も磨かれます。さらに、ポータルサイトや一括査定サイトを活用した反響営業やチラシのポスティング、飛び込み営業など、多様な営業戦略を体験できるでしょう。
不動産売買仲介のデメリット
不動産売買の仲介にはデメリットもあります。ここでは、以下2つのデメリットを紹介します。
- 収益の発生まで時間がかかる
- 必要な知識量が多い
詳しく見ていきましょう。
収益の発生まで時間がかかる
不動産売買の仲介は、不動産の査定から引き渡しまでに、半年〜1年程度の期間がかかる傾向にあります。賃貸仲介に比べて収益の発生まで時間がかかるため、キャッシュフローが不安定になる可能性があるでしょう。
しっかりと事業計画を練って運転資金を用意しておかなければ、立ち上げてすぐに資金がなくなってしまう可能性があります。
必要な知識量が多い
不動産売買の仲介は、広範な専門知識が必要です。賃貸仲介に比べて法規制や手続き、必要書類など、契約締結に至るまでのプロセスが多くなるためです。
とくに、不動産関連の法律や規制は複雑で、頻繁に変更されることも少なくないため、常に最新の情報を把握し続ける必要があります。法改正に対応できなければ、顧客との間で深刻なトラブルを引き起こしてしまう恐れもあるでしょう。
このようなトラブルを未然に防ぐために大切なのが、不動産管理システムの活用です。不動産管理システムを使えば、不動産売買の仲介業務をサポートしてくれます。
売買の不動産管理システムなら『いい生活のクラウドSaaS』
不動産売買の仲介は、賃貸仲介に比べて求められる知識量や事務量が多くなる傾向にあるため、不動産管理システムで効率化していくことが重要です。
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- 営業活動状況の可視化・分析
- 売り物件の査定書作成
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元付け業者に役立つ販売図面や査定書を簡単に作成し出力できます。また、複数の不動産ポータルサイトに広告を一括掲載したり、営業活動状況を可視化・分析したりできるため、客付け業者にも役立つでしょう。
運営会社である株式会社いい生活が最新の法令にも対応するため利用者は対応する必要がなく、月額20,000円から導入可能(※別途初期費用が必要)です。
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不動産売買仲介の業務フローを把握しよう
不動産仲介会社には、大きく分けて「元付け」「客付け」の2つがあります。それぞれで業務フローが異なりますが、どちらも内容を把握しておくことが大切です。
不動産売買の仲介は、賃貸仲介よりも大きな収益を見込める可能性がありますが、求められる知識やスキル、事務量も多くなる傾向にあります。収益が発生するまで時間がかかるため、できるだけ業務を効率化し、スピーディーに動くことが重要です。
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