不動産業界での独立を検討している方の中には、集客や資金繰りなど、さまざまな悩みを抱えている方もいるはずです。開業を目指しているのなら、どのようなメリットやデメリットがあるのかを前もって知っておくとリスクへの対策も行えます。
そこで今回は、不動産業界で独立をするメリットやデメリットに加えて、独立するための準備や流れについても解説します。成功させるためのポイントもご紹介していくので、独立開業を目指している方は参考にしてみてください。
不動産業界で独立する4つのメリット
まずは、不動産業界で独立するとどういったメリットがあるのか解説していきます。
コストを抑えて開業できる
独立開業となれば費用がかかることに悩む方も多いです。主に必要となる費用は以下のとおりです。
- 独立開業に必要な資格取得のための費用
- 免許登録費用
- デスクやチェアといったオフィス用品
- パソコン
- ソフトウェア
- 広告費
- 事務所の家賃
最初は自宅の一角を事務所として活用すれば、資金を抑えることが可能です。また、不動産業を始めるにあたっては人件費を抑えられる点もメリットです。
物件の仲介や管理、お客様との交渉などが主な業務内容となりますが、人を多く雇わずとも少人数で作業は行えます。ビジネスが軌道に乗り始めたらパートを雇うなど、コストを抑えた開業が可能です。
在庫リスクが少ない
製造業や小売業を営む場合、廃棄や売れ残りを考えた発注や製造が必要です。しかし、不動産の仲介業であれば土地や建物の仕入れを実施する必要がないため、在庫をもたなくても経営が可能です。
その結果、在庫管理や買取リスク、資金繰りのリスクを最小限で回避でき、事務所の成長や新規顧客獲得のための対策など、重要な作業にコストを集中できます。
自由度が高い
会社や組織に属して働くと、その会社の規約に則って仕事をしなければいけません。しかし、独立すれば、自分の思いどおりに自分らしく仕事ができます。営業方法も自分で考えられるので、やりやすい方法で作業を進めて顧客を獲得することが可能です。
大手不動産会社の中には、ノルマがあるところもあります。ノルマを達成するために、顧客を選ばずに接客をする、流れ作業のように仕事をこなすといったケースもあるでしょう。しかし、独立をすれば自分でノルマを設定できます。無理なノルマを掲げる必要もなく、過度な負担をかけずに仕事ができるようになるはずです。
顧客単価が高い
顧客単価とは、1回の取引で得られる収益を指します。不動産業界は他の業種と比較すると顧客単価が高い傾向です。顧客単価を求めるためには仲介手数料の計算方法を知る必要があります。仲介手数料の計算は複雑ですが、以下の速算法を活用すれば計算できます。
【仲介手数料の速算法】
物件価格×3%+6万円
例えば、3,000万円の物件を仲介した場合、速算法の計算式を使うと96万円となります。これが、1件の取引で得られる手数料です。仲介では、買主もしくは売主の一方を仲介する片手仲介の他、買主と売主の両方を仲介する両手仲介の2種類があります。
片手仲介であれば96万円を得られますが、両手仲介の場合は2倍の192万円もの利益が得られます。不動産業は取り扱う金額が大きい分、その分手数料収入も大きいものになります。
不動産業界で独立する3つのデメリット
不動産業界で独立する場合はさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。開業前にデメリットを把握し、リスクに備えて準備をしていきましょう。
黒字倒産のリスクがある
不動産業はコストを抑えやすく、在庫リスクがないといったメリットがあるため、新規参入しやすい業種です。不動産商品は金額が大きい分、手数料収入も大きくなります。しかし、金額が大きい分、資金繰りに失敗してしまうと倒産しやすいというデメリットもあります。
黒字だからといって油断はせず、倒産のリスク対策を行わないと事業を維持することが困難になり、失敗してしまう危険があります。開業前には資金繰りの計画を立てることが重要です。
集客が困難になる場合もある
独立すると、企業で働いていた場合はその会社のブランド力を活かせなくなるため、集客が困難になるケースもあります。独立開業してから慌てないためにも、開業する前段階から集客戦略を練り、準備を進めることが大切です。
集客手段としてはまず、ホームページの制作から進めていきましょう。ホームページは「どのような会社なのか」を判断するためにも大切なツールです。事業内容や会社概要の他、細かい情報も掲載して自社を多くの人に広めましょう。
ホームページは制作会社に依頼して作ってもらうことも可能ですが、制作費用や更新・修正依頼時のコストなどが発生してしまいます。そこでおすすめしたいのが、『いい生活ウェブサイト』です。『いい生活ウェブサイト』は、不動産会社のサイト制作に特化し、コンテンツ作成に必要な機能やテンプレートが充実しているクラウド型のホームページ作成ツールとなります。
『いい生活のクラウドSaaS』のラインナップに含まれているため、その他のサービスも併せて活用できます。集客手段としてホームページ制作を取り入れたい場合は、『いい生活ウェブサイト』をぜひご利用ください。
また、安心して利用してもらうためにもアフターフォローにも注力することが大切です。不動産の売買は引き渡しが終われば終了ではありません。お客様の相談窓口を設置する以外にも、購入した物件の資産運用方法に関する資料作成や税金に関するアドバイス、季節ごとの挨拶状の送付など、不動産会社によってさまざまなアフターフォローが展開されています。アフターフォローにも満足してもらえれば、より信頼できる会社として認められます。紹介を得ることにもつながるので、積極的に取り入れてみてください。
また、不動産業界では人脈も大切です。不動産業界内でのつながりは、取引先の開拓やマーケットに関する情報源となるため、物件情報の早期取得といったメリットも期待できます。そのためにも、各不動産協会の団体などが主催しているイベントやセミナーなどに足を運び、人脈を広げておきましょう。
1人ですべての業務を対応しなくてはいけない
不動産業は顧客の対応や物件の確認だけが仕事ではありません。幅広い種類の業務をこなす必要があります。主な業務は以下のとおりです。
- 営業
- 人事
- 会計
- 法務
少人数で経営する場合、すべての業務を把握しなければいけません。また、顧客によっては営業時間外に対応してほしいと依頼されるケースもあるでしょう。休みやプライベートの時間を削らなければいけない場面もあるので、あらかじめ理解しておきましょう。
万が一病気や怪我をしてしまえば業務を続けられずに事業継続に影響を与えるケースもあります。顧客からの信頼を失う可能性もあるので、体調管理にも注意してください。
不動産業で独立するための準備・流れ
不動産業を営むのであれば、事前に開業までの手順を知っておくとスムーズな開業を目指せます。必要な資格の種類や独立するまでの流れを解説していきます。
1.宅地建物取引士の資格を取得しておく
不動産会社を設立するためには、「宅地建物取引士」の資格取得が必須です。不動産を売買するお客様の多くは、不動産契約における専門的な知識を有していません。そのため、不当な取引で損害を被る危険もあります。契約に関わる重要事項の説明は宅地建物取引士しかできませんので、お客様に安心して取引をしてもらうためにも、独立を計画しているのであれば、まずは宅地建物取引士の資格を取得しましょう。
宅地建物取引士は、毎年20万人前後もの受験者数がいる国家資格です。試験は年に1回実施され、例年10月の第3日曜に行われます。
受験する場合は官公庁や書店などで願書を入手して郵送、もしくはネットで申し込みの2種類があります。試験内容は4肢択一のマークシート方式となっており、出題数は50問です。合格基準点は試験内容によって変動しますが、約70%の正解率で合格となります。
2.業務形態・経営形態を決める
資格を取得できたら業務形態・経営形態を決めていきます。業務形態は、売買仲介業・買取業・賃貸仲介業・賃貸管理業・不動産開発などがあります。自分が開業したい業務形態によって必要な知識が異なるので、早めに決めておくと知識の習得を早い段階でスタートできるでしょう。
また、経営形態は個人経営・法人経営の2種類があります。個人経営の場合は、税務署への届出のみで開業できるため手間を大幅に削減できます。開業資金を抑えられる点もメリットです。ただし、法人営業と比較すると信用が低い点がデメリットといえます。
一方、法人経営は社会的信用度が高い点がメリットです。ただし、登記申請の手続きや認証手数料など、開業時の手間がある点がデメリットとなります。それぞれの特徴を理解して業務形態・経営形態を決めていきましょう。
3.独立するために資金がどれくらい必要か確認・準備をする
独立して開業するためにも、どの程度の資金が必要になるか確認をして準備を進めていきましょう。開業資金の目安としては、経営形態や業務形態、事務所を置くエリアによって大きく異なりますが、400万〜1,000万円が相場です。その他にもランニングコストがかかるので、あらかじめ用意しておくと安心です。
事業を継続するにあたっては資金繰りが重要となります。開業当初は経営が安定していないので、余裕をもって資金を確保しておく必要があります。万が一開業後に資金が足りなくなってしまえば、融資を受けなければいけません。
しかし、融資を受けるには審査が必要です。経営状況が悪い場合は審査に通らない可能性もあるため、注意してください。
4.事務所の準備をする
不動産業をスタートさせるためにも、事務所を用意しなければいけません。宅地建物取引業免許の取得要件として、事務所の設置が義務付けられているためです。事務所の場所は集客に大きく影響を与えます。人通りの多さやアクセスの良さを考慮して設置するエリアを決めましょう。
ただし、事務所の建設費用や賃貸費用が高すぎてしまうと経営の継続に影響を及ぼします。予算も考えて事務所を探すことも大切です。
また、賃貸契約できる物件の中には、事務所として使用できない物件もあります。事前にオーナーに確認をして、事務所として使用できるか相談してみましょう。初期費用を抑えたい場合は、自宅を事務所として使用することもおすすめです。
5.宅地建物取引業免許を申請する
宅地建物取引業を営む場合は、個人や法人を問わず宅地建物取引業免許を取得する必要があります。免許を取得するためには、事務所の設置の他に宅地建物取引士の設置、営業保証金、必要書類を用意してから申請を行わなければいけません。書類に不備があれば再提出となるので、不安があれば行政書士に依頼することも検討しましょう。
また、1つの事業所において従業員5人につき1人は宅地建物取引士である必要があります。5人以上の従業員で経営を実施する場合は、人数に合わせて宅地建物取引士を設置してください。
6.保証協会に加入しておく
不動産業では、金額の大きなサービスを提供するため、少しのミスで大損害が発生する可能性もあります。その損害は会社だけではなく、顧客にも与えるリスクがあります。その場合、損害賠償を請求される事態に陥るケースもあるため事前の対応策が必要です。
保証協会に加入していれば、賠償金の支払いを立て替えてくれます。セミナーへの参加や協会員同士の交流もできるので、人脈作りにもプラスになるでしょう。保証協会は、「ハトさん」の通称で知られる「全国宅地建物取引業協会連合会」と、「ウサギさん」の通称で知られる「全日本不動産協会」の2種類があります。加入先は自由に決められますが、規模や歴史、入会費用に違いがあります。
なお、保証協会に加入しない場合、開業する際には、事前に法務局に1,000万円を供託する義務があります。しかし、保証協会に加入すれば、弁済業務保証金分担金の60万円を協会に預けることで1,000万円の支払いが免除されます。初期費用を抑えるためにも保証協会に加入しておきましょう。
7.業務に必要な備品を準備する
宅地建物取引業の免許を申請する際には、事務所要件を満たしている必要もあります。設置が必要となる備品は以下のとおりです。
- オフィス家具:デスクやチェア、収納棚など
- OA機器:電話やコピー機、パソコンやシュレッダーなど
- 事務用品:印鑑や名刺、筆記用具や契約関連の書類など
- その他の備品:車や看板、パーテーションなど
業務をスムーズに行うためにも使いやすい備品を用意しましょう。
不動産業の独立を成功させるために知っておくべきこと
ここからは、不動産業の独立を成功させるためのポイントを解説していきます。
事前に不動産業界内外での人脈を広げておく
前述したように、不動産業界では人脈が重要です。全日本不動産協会やその他の業界が主催しているイベントやセミナーなどに積極的に参加をして、意見交換や情報交換を行うと人脈を少しずつ形成できます。
また、地元のコミュニティも重要です。事務所を設置する地域の自治体や商店会などと良好な関係を築き上げると、地域の動向やニーズの獲得がしやすくなります。その地域に適したビジネスを提供できれば、信頼も獲得しやすくなるでしょう。
事業を安定させるために「営業力」を身に付ける
独立後、経営を安定させるためには集客が重要となります。そのためにも営業力を強化し、集客力を高めましょう。不動産業界は契約金額が大きいので、信頼を築けるような営業力を身に付けることで、顧客に寄り添った営業ができるはずです。
そのためにもコミュニケーション能力は必須のスキルです。顧客のニーズを汲み取る会話力や長期的な取引を進めるための忍耐力も必要です。また、高額な商品を売るためのサービスや商品の価値を伝えられるプレゼンテーション能力もポイントになります。
その他にも、取引のタイミングや相場を見極める洞察力も重要です。幅広い営業力を身に付けて、顧客のニーズに寄り添った接客をしていきましょう。
資金繰りに注意する
長期経営を目指すためにも開業資金を抑えることが大切です。また、当面の運転資金も用意する必要があります。資金繰りがうまくいかなければ倒産に陥る危険性もあります。
倒産のリスクを抑えるためにも、事業計画に加えて数年先を見越した資金計画も立てておきましょう。また、補助金を活用できるケースもあります。国や自治体による補助金を受けられれば、開業資金や運転資金を抑えることに役立ちます。
他にも、融資を活用する場合は日本政策金融公庫の活用も検討してみてください。日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者などを支援してくれる政策金融機関です。融資制度は複数あり、利用条件も異なるので事前に確認しておきましょう。
独自の強みを作る
大手から中堅・地場まで、不動産業界にはさまざまな競合がいるので、他社に負けないような戦略が必要です。そのためにも、自社の得意分野や専門知識を把握し、強みのあるところで勝負すると良いでしょう。例えば、ファミリー向けの物件提案を得意としているなら、過去の実績などをアピールしていくと競合他社との差異化がしやすくなるはずです。
不動産経営に関連する知識も習得する
不動産経営に関する知識の習得も独立には欠かせません。例えば、不動産業でもIT化やDX化は進んでおり、スマホで物件を検索して資料請求や問い合わせをするのも当たり前となっています。 そのため、Webマーケティングに関する知識は必須といえるでしょう。
また、法律に関する知識も重要です。宅地建物取引業法や都市計画法、建築基準法や借地借家法など、不動産に関する法律は複数あります。独立を目指すなら、業務に関連する法律にも目を配りましょう。会社法や労働三法、所得税法や法人税法なども経営において重要となるので、知識を習得して業務に活かしてください。
不動産業での独立を成功させるために業務支援システムの導入も検討してみよう
在庫リスクがなく、コストを抑えた開業が可能な不動産業界での独立にはさまざまなメリットがあります。しかし、黒字倒産のリスクや集客が難しいといったデメリットもあるので、入念な対策をしてから開業する必要があります。
とくに少人数で開業する場合は、さまざまな業務を担う必要があるため、効率化を考えた経営が大切です。例えば、『いい生活のクラウドSaaS』を活用すれば、賃貸管理や賃貸仲介、売買仲介などの不動産業務に関する幅広いサポートを受けることができます。業務の効率化を図ることができますので、ぜひお気軽にご相談ください。