プロパティマネジメント(PM)は、不動産投資における所有と経営の分離という考え方に基づき、不動産オーナーやアセットマネージャーに代わって運営戦略を立案し、行動します。最大の役割は、「不動産から得られる収益を最大限に高めること」です。
そこで今回は、そんなプロパティマネジメント(PM)がどのような役割を担っているのか、どのような業務を行っているのか、求められるスキルにはどのようなものが挙げられるのか、などの疑問に応えていきます。また、役に立つ資格もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
プロパティマネジメント(PM)とは?
プロパティマネジメント(PM)の目的は、前述したように、不動産から得られる収益を最大限高めることです。そこでまずは、その役割や注目されている理由、アセットマネジメントやビルディングマネジメントとの違いを見ていきましょう。
プロパティマネジメント(PM)の目的
プロパティマネジメント(PM)の目的は、「不動産から得られる収益を最大限高めること」です。そのために必要な家賃の回収や入居者のクレーム対応、建物のメンテナンスなど、幅広い業務をオーナーやアセットマネージャーに代わって実行します。
一般的な賃貸管理会社との違いは、入居者よりもオーナーに寄り添って不動産を運用し、賃貸物件が持つ価値を高めていく点です。プロパティマネジメント(PM)を担っている人は、プロパティマネージャーと呼ばれます。
プロパティマネジメント(PM)が注目されている理由
プロパティマネジメント(PM)が注目されている理由として、「人口減少による賃貸物件の空室増加」が挙げられます。総務省の「平成30年版 情報通信白書」によれば、日本の人口は2008年をピークに減少傾向にあり、賃貸物件の需要も減少していくことが予測されています
人口の減少に対して賃貸物件は一定数を保っているため、空室率は自ずと上がっていくことでしょう。賃料を下げれば空室は減るかもしれませんが、収入にマイナスの影響を与えます。不動産経営が今後さらに難しくなると考えられる中、プロのノウハウを活かした不動産経営の注目度が高まっています。
アセットマネジメント(AM)・ビルディングマネジメント(BM)との違い
アセットマネジメント(AM)やビルディングマネジメント(BM)と似たようなイメージを持つ方も少なくないでしょう。しかし、この両者とプロパティマネジメント(PM)には大きな違いがあります。
アセットマネジメント(AM)は、オーナーや投資家に代わって資産の管理・運用を行う業務を指します。アセットは「資産」という意味で、不動産だけでなく、株式や債権などの金融資産なども含めたすべての資産価値の向上による収益の最大化が業務の目的です。
ビルディングマネジメント(BM)は、建物そのものの管理をすることが主な業務です。建物の清掃や設備のメンテナンス・管理・点検などを行っています。プロパティマネジメント(PM)やアセットマネジメント(AM)よりも管理に重きを置かれていることが相違点です。
プロパティマネジメント(PM)の業務内容
プロパティマネジメント(PM)は、不動産管理の幅広い業務を担っています。続いては、その仕事内容を解説していきます。
リーシングマネジメント業務(LM業務)
リーシングマネジメント業務(LM業務)は、賃貸借に関連する業務です。オーナーに代わって、入居者(商業不動産の場合はテナント)の募集や周辺の相場を調査して家賃の設定を行います。また、賃貸物件の空室を埋めるための施策を考えることも、リーシングマネジメント業務(LM業務)に含まれます。
入居者募集の戦略を考える際には、賃貸仲介会社へのヒアリングを実施し、営業スタッフからの意見を反映させることが重要です。そうすることで、いつまでに、どのくらいの賃料で何件の入居者を獲得できるのかを大まかに把握できるはずです。オーナーの利益を最大化するためには欠かせないポイントといえるでしょう。
集金業務
プロパティマネジメント(PM)は集金業務も行います。集金業務は、家賃の回収を行うだけではありません。請求書をテナントや入居者に発行して入金をチェックしたり、各種費用の精算業務、滞納金の催促なども行ったりします。
賃料の未収や滞納があった場合は、できるだけ早く対応し、回収する必要があります。回収できない期間が長くなってしまうと、オーナーの利益を損なうことになるからです。
また、月次キャッシュフローの管理やレポーティングも重要な業務の1つです。オーナーからの要望があった場合は、収支予算計画の作成、年次の予算実績の管理などにも対応します。
建物の管理業務
建物やテナントの管理業務もプロパティマネージャーの業務範囲の1つです。建物の清掃や設備のメンテナンス、点検、巡回業務などを主に行います。
清掃は、美観や快適性に大きな影響を与えます。入居者や来訪者の印象といった満足度に直結するため、ないがしろにはできません。適正な保守管理や営繕は建物の資産価値維持につながることも見落とせないポイントといえるでしょう。
入居者対応
入居者対応もプロパティマネジメント(PM)の業務に含まれます。具体的には、入居または退去契約に関する手続きやクレーム対応などです。
入居者同士のトラブルが起こった場合は、入居者の声に耳を傾け、適切な処理を行わなければなりません。また、設備修繕の手配を行う場合もあるため、適切な判断力も必要です。
請求出納業務
請求出納業務も、プロパティマネジメント(PM)が担う重要な業務です。具体的には賃料や共益費の請求、滞納管理、支出管理、会計処理などが挙げられます。
賃料請求 | 家賃の請求書発行や支払いの案内を行います。支払いの確認も含まれます。 |
共益費請求 | 共有部のメンテナンス費用や管理費などを請求します。日々の入金をチェックし、期日までに請求書の作成を行います。 |
滞納管理 | 入金を定期的にチェックし、支払われていない部分に関する督促や交渉を行います。 |
支出管理 | 修繕費用や清掃費用など物件の管理に必要不可欠な支出の管理、支払いを行います。予算作成や請求書の処理、支払いスケジュールの管理なども含まれます。 |
会計管理 | 収支のデータを正しく記録するほか、税務申告や報告書の作成などにも対応します。 |
コンストラクションマネジメント業務
コンストラクションマネジメント業務とは、建物の改修やリノベーションなどのプロジェクトを管理するための業務です。具体的には、プロジェクトの計画や設計・施工管理、予算やスケジュール、品質などの管理といった業務が挙げられます。
プロジェクトを円滑に進めるためには、予算やスケジュール面でトラブルが起こらないようにしなければなりません。そのため、建築士や施工会社、関係者との調整を円滑に行うコミュニケーション力が求められます。
一般的な不動産管理会社の業務内容との比較
一般的な不動産管理会社は、賃貸物件の日常的な管理業務を行います。オーナーの代理で、入居者の選定や契約の手続き、賃料の徴収、トラブルへの対応など物件の運営全般を担当します。
プロパティマネジメント(PM)も当該業務を担っていますが、建物のメンテナンスや収益の最大化を目指す戦略立案なども業務領域としていることが相違点です。
快適な環境を提供することが一般的な不動産管理会社のタスクであるのに対し、付加価値の提供を戦略的に実行することもプロパティマネジメント(PM)のタスクであることが両者の違いといえるでしょう。
プロパティマネジメント(PM)に求められるスキル
プロパティマネジメント(PM)には、求められるスキルが複数あります。ここでは、プロパティマネージャーとして活躍するために欠かせないスキルをご紹介します。
マネジメントスキル
オーナーの代わりにさまざまな管理業務を並行して行わなければならないプロパティマネジメント(PM)において、マネジメントスキルは欠かせないスキルといえるでしょう。
スケジュールや予算の調整など、マネジメントがうまくできないとプロジェクトを円滑に進めにくくなってしまいます。問題が発生したら、原因の分析や解決案を提示し、関係各部署や社外の調整や指示出しなども行います。
プロジェクトを成功させるために、リーダーとしてプロジェクトをけん引していかなければなりません。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルも、プロパティマネジメント(PM)の仕事を円滑に行うために必要不可欠なスキルです。関係者間で意見が食い違った場合、間に入って調整しなければなりません。また、入居者やオーナーへの報告など、関わる相手が多種多様なことも、コミュニケーションスキルが重要とされる理由の1つです。
コミュニケーションスキルが高ければ、入居者からのクレーム対応や滞納者への督促など、さまざまなトラブルにも適切に対応できる可能性が高まります。対応の仕方を少しでも間違えると退去の原因になりかねないので、慎重かつ柔軟に対応しなければなりません。
さまざまな分野に対する学習意欲
さまざまな分野に対する学習意欲があることも、プロパティマネジメント(PM)の仕事をする上で重要です。法律や市況、消費者のトレンドなど、身に付けるべき知識は多岐にわたります。
例えば、契約書を作成する場合、法律的な事務処理が必要になるケースもありますが、関連法規が改正されるたびに覚え直さなければいけません。それだけでなく、物件の収益を最大化するには、税金に関する幅広い知識も身に付ける必要があります。常に情報をアップデートすることを苦にしない、新しい情報のアンテナ感度が高い人はプロパティマネージャーに向いているといえるでしょう。
プロパティマネジメント(PM)で役立つ資格
プロパティマネジメント(PM)を行う際、取得しておくと役に立つ資格があります。ここでは、以下の3つをご紹介します。
- 宅地建物取引士
- マンション管理士
- 管理業務主任者
宅地建物取引士
宅地建物取引士は、宅建士とも呼ばれている資格です。不動産取引の専門家だと証明するための国家資格となります。
重要事項の説明、重要事項説明の内容を記載した書面への記名、締結後の契約書への記名は、宅地建物取引士のみができる独占業務です。また、不動産の売買や仲介会社では、事務所の従業者のうち5人に1人の割合で専任の宅地建物取引士の設置が定められています。不動産業界における需要が高い資格といえるでしょう。
2023年度の宅地建物取引士試験の合格率は、17.2%でした。需要が高いので取得を目指したいと考える方は少なくありませんが、合格は狭き門ですので、取得するためには相応の学習時間が求められます。
マンション管理士
マンション管理士は、マンション管理組合の指導やコンサルティング、マンションの運営を行うために必要不可欠な国家資格です。マンション運営や管理に関するスペシャリストとして、管理組合から相談を受けたり、さまざまなトラブルの仲裁などを担ったりします。
なお、次に紹介する管理業務主任者と近しい資格というイメージを持つ方も少なくないでしょう。管理業務主任者はマンションの管理会社の側から管理状況の報告や受託契約の説明などの業務を行うのに対し、マンション管理士は管理組合の側でマンションの管理に関わるという点が異なります。
管理業務主任者
管理業務主任者は、マンションの委託契約に関する重要事項の説明や管理事務の報告業務を行うために必要不可欠な国家資格です。
マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合30組合につき1名以上の管理業務主任者を設置しなければならないと法律で定められています。
なお、管理受託契約を結ぶ際の重要事項説明と記名、管理受託契約書への記名、管理事務に関する報告は管理業務主任者の独占業務です。
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プロパティマネジメント(PM)は今後の不動産業界には欠かせない職種
プロパティマネジメント(PM)は、不動産投資における所有と経営の分離という考え方に基づき、不動産オーナーやアセットマネージャーに代わって、不動産の経営戦略を立案・実行します。少子高齢化によって賃貸物件の需要が低下することが予想される中、不動産経営の切り札的存在として注目を集めています。
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