不動産売買における違約金は、不動産買取契約を締結した後に正当な理由なく、自己都合によって契約解除を申し出た際に発生するものです。その場合、売買代金の中の一定金額を違約金とすることが一般的です。
今回は、違約金の詳細に加えて、不動産売買時の契約解除について解説します。
違約金とは?
違約金は、当事者間の契約において債務不履行があった場合に相手に支払うことを約束する金銭です。不動産売買契約書では、一定の割合を違約金にする条件を設けています。
不動産売買の場合、不動産会社と媒介契約をしている期間中に自己都合で契約を破棄・解除する、契約書に記載された内容に違反する行為を行うといったケースで発生します。
違約金と損害賠償の違い
違約金と近いものとして損害賠償があります。さらに詳しく分類すると、違約金には損害賠償額の予定となるケースと、違約罰となるケースに分かれます。
違約金における損害賠償額の予定とは、契約上債務不履行が起こった場合に、違反者が相手に対して支払う損害賠償の金額をあらかじめ決めるものです。一方の違約罰は、債務不履行者が、相手に対して損害賠償額に加えてペナルティを支払うものです。違約金が違約罰の場合は、違約金とは別に損害賠償を請求できます。
なお、違約金が損害賠償額の予定となっている場合、違約金と損害賠償は同じものとなります。そのため、当事者に対して違約金とは別に損害賠償を請求することはできません。
その一方で、違約金が違約罰となる場合は、違約金と損害賠償が異なりますので、違反の当事者に違約金と損害賠償の両方を請求することが可能です。
違約金の相場・計算方法
続いて、違約金の相場や計算方法をみていきましょう。違約金は、損害賠償の見込み金額を基準にしていて、不相当に高くなければ、自由に決めることが多いでしょう。
違約金の相場は内容によって異なりますが、一般的には売買物件の価格の10~20%、賃貸借契約であれば賃料の3~12カ月程度です。いずれも宅建業法に定められており、宅建業者との取引でこの上限を上回ることはありません。
例えば、3,000万円の物件を購入する場合、違約金が10%であれば、300万円の支払いが必要です。手付金を仮に200万円支払っていた場合であれば、この金額を差し引いた100万円を支払います。
違約金はなぜ10~20%が相場なのか?その背景を解説
しかし、違約金はなぜ10~20%が相場なのでしょうか?違約金は上限を設けることで規制をしている部分があります。不動産契約売買では、違約金の上限を売買代金の20%にして規制しているのです。20%を超えた部分に対しては無効扱いになります。
そもそも違約金自体が契約違反を防ぐためなので、防止につながる水準にするべきと考えられています。あまりに高額な違約金では、公序良俗違反になってしまい、結果的に無効になる可能性もあるのです。
不動産売買で違約金が発生するケース・発生しないケース
不動産売買において、違約金が発生するケースとそうでないケースが存在します。ここでは、それぞれのケースについて解説します。
違約金が発生するケース
不動産売買において、違約金が発生するのは、売買契約や媒介契約に違反した場合です。特に、専属専任媒介契約や専任媒介契約では、他の不動産会社に物件の売却を依頼することが契約違反となり、違約金の対象になります。
また、売主が自己都合で契約を途中で解除した場合も違約金が発生することがあります。例えば、売買契約の締結後に一方的な理由で契約を破棄したり、媒介契約の期間中に契約違反があったりした場合などが該当します。
このように、契約違反や自己都合での契約解除は、違約金が発生する代表的なケースです。契約内容をしっかり確認し、慎重に対応するようにしましょう。
違約金が発生しないケース
不動産売買における自己都合の契約解除であっても、違約金が発生しないケースも存在します。それは、売主にも予測や対応ができない事態が起こった場合などです。
台風や地震、水害などの災害などはその一例です。この場合は、契約解除の原因が売主にはないと認められるため違約金が発生しません。
また、相互の合意によって契約が解除された場合も違約金は発生しません。稀な事例ではありますが、裁判によって違約金が免除されるといったケースもあります。
不動産売買の契約を解除するには?
次に、不動産売買契約の解除の仕方について解説します。
手付金を放棄する
不動産売買契約を締結する際には、一般的に手付金を不動産会社に支払います。手付の金額は、不動産売買代金の5~10%程度です。
手付金は、その物件の購入を約束する意志表示のようなもので、売買代金の一部に充てられます。
手付金には、契約違反の際に没収される違約手付、契約解除の際の解約手付、売買契約を証明する証約手付などがあります。不動産売買契約の際の手付金は、解約手付に該当することが一般的です。
売主や買主には契約締結後であっても契約を解除する権利があり、売主であれば受領した手付金額の2倍の額を買主に支払って解除できます。買主であれば、支払った手付金の放棄によって解除することが可能です。
引き渡し前に滅失・損傷を受けた
地震、洪水、台風などの自然災害によって対象の不動産が損傷や滅失などが発生した場合は、売買契約を白紙解除できます。復旧や補修が合理的ではないと判断されるからです。
このような場合、買主に過失があるわけではありません。そのため、契約は白紙解除となり、売主は受領した手付金を無利息で買主に返金します。
消費者契約法に基づいて契約の取り消しを図る
「土壌汚染や地盤沈下など不動産において重要な問題があることを隠していた」「不動産業者が消費者に間違った情報を伝えてしまった」などのケースでも、売買契約の解除は可能です。
これらに加えて、資産価値が上がるといった情報で、心理的な不安定さに付け込んで購入させた場合も消費者契約法の保護対象になるケースに該当し、その場合も契約の取り消しが可能となります。
消費者契約法は、消費者と事業者間の取引で、知識、情報量、交渉力などの差があることを踏まえて、不利になりやすい消費者を守るものです。
不動産の情報を正確に伝えられていなかった
購入した不動産に不具合がある場合、品質、種類などが契約内容と異なる場合などは、買主が契約解除を申し出ることができます。例えば、土地を購入したものの、家を建築できない、物件に瑕疵があったが伝えられていない、建物に構造上の欠陥があったなどのケースです。
このように取引対象となる不動産に問題があった場合は、契約不適合で契約を解除できます。
また、契約不適合の原因が売主になかった場合も責任を負う必要があります。ただし、事情に応じて免責になるケースもあります。
住宅ローンの審査が通らなかった
住宅ローンを申し込んだのに審査に通らなかった場合、住宅ローン特約を契約時に定めることで、万が一ローンを利用できなかった場合でも違約金免除での契約解除が可能です。この住宅ローン特約は、ローンを組むことを前提に住宅購入をする契約をした場合の特約です。
特約を組んでいれば、金銭的な負担のないまま売買契約を解除できます。
ただし、不動産売買契約書の項目で、「ローン申請先の金融機関名がない場合は特約適用外」と記載されている場合もあります。
反社会的勢力の排除による契約解除
不動産売買契約書には「反社会的勢力排除」に関する契約条項が含まれています。これは、平成16年~23年にかけて全国で制定された暴力団排除条例に基づく内容で、取引相手が暴力団関係者と判明した場合は契約を解除することが可能です。違反した当事者は違約金の支払いに加えて、制裁金の支払いも課せられます。
違約金は売買代金の20%、制裁金は売買代金の80%が一般的です。しかし、売主が宅地建物取引業者で買主が反社会的勢力の場合、宅地建物取引業法第38条に基づき、売主は制裁金を受け取ることができません。
不動産売買契約を解除するタイミングについて
もし、不動産の売買契約を解除する場合は、以下のタイミングで行います。
- 媒介契約後に解除
- 契約の履行前に解除
- 売買契約の締結後に解除
- 引き渡し後の契約違反で解除
媒介契約後に解除する場合
不動産売却の際、媒介契約を結んだ後でも、状況に応じて契約を解除することが可能です。ただし、進行状況によって対応が異なるため、注意が必要です。
まず、媒介契約を結んだ段階では、比較的自由に契約を解除できますが、契約期間内での解除となるため、不動産会社との調整が必要です。
次に、買主が見つかり、売買契約が進んでいる場合は、契約解除に違約金が発生する可能性があります。また、契約の進捗状況によっては、解除が難しくなることもあるでしょう。
さらに、媒介契約後に契約を解除することは可能ですが、売却の進行状況によって手続きや条件が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
売買契約の履行前に解除する場合
不動産会社との間で売買契約が成立し、契約履行に着手する前のタイミングであれば、手付金放棄によって契約を解除できます。不動産売買契約における手付金は、解約手付という意味合いで使われていることが一般的です。そのため、契約成立後での解約となると、手付金は没収ということになります。手付金には、解約手付、違約手付、証約手付があり、売買契約締結後の契約解除は解約手付になります。
売買契約の締結後に解除する場合
売買契約を締結した後でも、売主の承諾があれば契約を解除することは可能です。しかし、契約が成立した後に解除する場合、違約金や損害賠償が発生することがあります。
宅地建物取引業法第38条では、売主が不動産会社である場合、損害賠償や違約金の上限は代金の総額の20%以内と定められています。違約金の金額は不動産会社によって異なりますが、一般的には代金の10%〜20%ほどが相場です。
契約解除には売主と買主の双方の合意が必要であり、どちらか一方だけの判断で解除することは難しい点も注意が必要です。
引き渡し後の契約違反で解除する場合
不動産引き渡し後に契約違反が見つかった場合も契約解除を申し出ることができます。契約違反による売買契約解除の申し出を受けた当事者は、相手に対して違約金の支払いが必要です。その場合、違約金は通常の請求額よりも高額になる可能性があります。
なお、引き渡し済みの物件の場合は原状回復義務があり、すでに登記変更をした場合は所有者権移転登記修正が必要になります。
賃貸契約でも違約金が発生する
違約金は、不動産売買だけでなく賃貸契約でも発生します。ここでは、賃貸契約で違約金が発生するケースについて解説します。
賃貸契約で違約金が発生するケース
申込後の解約や、短期間での解約の場合、違約金が発生する可能性があります。
入居の申込時点では、まだ契約が完了していないため、違約金は発生しません。しかし、入居審査を経て、契約締結する段階においては、1万円程度の違約金が発生する可能性があります。この金額は管理会社によって異なりますが、最初に申込金として徴収した上で、途中解約の場合に違約金に切り替えるケースもあります。
賃貸契約の違約金の相場
賃貸契約の場合、違約金の相場は家賃1カ月分程度になることが一般的です。なお、契約内容によっては2~3カ月分になることもあります。
賃貸契約は2年を契約期間とすることが一般的ですが、契約満了を待たずに途中解約した場合に違約金が発生します。
短期解約違約金は、敷金や礼金がない物件、キャンペーン期間で家賃が割引されている物件、フリーレント物件などにみられます。初期費用を抑えているため、短期間の解約では見合わないことから設定されているものです。
契約違反の場合の違約金
賃貸物件には、それぞれの物件に応じて禁止事項や決まりが設けられています。これらの契約に違反した場合、損害賠償請求や高額な費用を請求されるケースも少なくありません。
例えば、家賃滞納を繰り返す、ペット禁止の物件でペットを飼育する、入居人数を大幅に超えた状態でルームシェアするなどです。このような場合、違約金の支払いが高額になる可能性が高まります。
違約金が発生するケースや相場を理解しておこう
不動産取引では、契約上の義務が果たされなかった場合に違約金が発生することがあります。違約金は損害賠償とは異なる性質を持つため、どのような場合に適用されるかを理解し、契約内容をしっかり管理することが重要です。
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