マンションやアパートなどの駐車場や敷地内に、無断で車やバイクを停められて困っている大家さんや不動産管理会社の方もいるのではないでしょうか。無断駐車は、警察に相談しても対応してもらえないことが多く、オーナー自身で対処する必要があります。
そこで今回は、無断駐車の対処法について詳しく解説します。また、駐車場でよく起こる他のトラブルや、その解決方法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
無断駐車の対応が難しい理由
駐車場を勝手に利用される「無断駐車」は、対応が難しい問題の一つとされています。では、なぜ無断駐車への対応が難しいのか、その理由を解説します。
私有地への無断駐車は警察では取り締まれない
マンションやアパートなどはオーナーの私有地ですが、私有地内に無断駐車されても、駐車違反または道路交通法違反で警察に取り締まってもらうことができません。警察が車の移動を命じることができるのは、公道に限られるためです。
そのため、私有地での無断駐車は、原則としてオーナーや管理者が当事者間で解決しなければならず、賃貸管理で対応が難しいトラブルの一つとされています。
対応の仕方によっては不法行為とみなされる可能性がある
民法には「自力救済禁止の原則」があり、これは自分の権利が侵害されても、法律の手続きを経ずに実力行使で解決することを禁止するものです。刑法第242条では、このような実力行使を禁じており、民法第200条で占有回収の訴えを通じて法的に対処することが定められています。
例えば、無断駐車された車を勝手にレッカー移動したり、タイヤにロックをかけたりすることは、この自力救済に該当します。したがって、このような対応をしてしまうと、対処した側が不法行為をしたとみなされ、車の原状回復や賠償を求められる可能性があります。また、あまりに強引な対処を行うと、刑事上の責任が問われる場合もあるため、注意が必要です。
無断駐車への対処は速やかに行うことが大切
私有地での無断駐車は民事事件であるため警察は介入できません。したがって、無断駐車に対する対応はオーナーや管理会社が行う必要があります。くわえて、対応が遅れると、入居者が駐車場を利用できず、不便を感じることも考えられます。例えば、他の場所に車を停めなければならないなど、日常生活に影響が出る可能性も考えられるでしょう。
無断駐車を防ぎ、入居者の満足度を保つためにも、迅速な対処が必要です。また駐車場の指定区域外に車が停められている場合、人や他の車の通行を妨げることもあるため、同様に速やかな対応が求められます。
私有地への無断駐車の防止策
私有地への無断駐車の防止策として以下をご紹介します。
- 敷地や駐車場の目立つ場所に看板を設置する
- 三角コーンなどの障害物を設置する
- 防犯カメラを設置して監視する
- 駐車場の区画ごとにネームプレートを設置する
- 定期的に敷地内や駐車場を巡回する
敷地や駐車場の目立つ場所に看板を設置する
無断駐車をする人の中には、その場所が駐車禁止区域であることを知らない場合もあります。駐車場の目立つ場所に「無断駐車禁止」といった注意書きの看板を設置することにより、駐車できないことを周知できれば、無断駐車を防止する効果が期待できます。
ただし、看板に罰金額を記載しても法的な効力はありません。さらに、過度に高い罰金を設定すると、恐喝行為として逆に訴えられるリスクもあります。「無断駐車の時間に応じて損害賠償を請求する」などの文言を使う方が適切でしょう。
三角コーンなどの障害物を設置する
三角コーンやチェーンなどを設置することにより、空きスペースへの無断駐車を防ぐ方法もあります。三角コーンなどの障害物が設置されていれば、車から降りて移動させる手間を考え、駐車を諦める可能性が高まります。
その一方で、駐車場の契約者が車を出すときに三角コーンを設置する手間が生じるため、事前に入居者へ相談と説明をしておくことが重要です。
防犯カメラを設置して監視する
駐車場にダミーの防犯カメラを設置するだけでも、無断駐車のリスクは軽減します。本物の防犯カメラであれば、無断駐車している車の種類やナンバーなどを記録することも可能です。
防犯カメラは、看板・三角コーンなどに比べるとコストがかかります。しかし、他の方法に比べて高い防犯効果が期待できるため、一案として設置を検討してもよいでしょう。なお、本物の防犯カメラの設置を検討する際は高画質かつ広範囲に加え、夜間や逆光でも撮影できるものがおすすめです。
駐車場の区画ごとにネームプレートを設置する
1区画ごとに「入居者様専用」と記載したネームプレートを設置するのもおすすめです。間違って別の入居者の駐車スペースに停めてしまうといったことの防止につながり、契約者同士の駐車トラブル防止にも役立ちます。
なお、ネームプレートに入居者の名字などの個人情報を掲載する場合は、事前に入居者に説明し、合意を得る必要があるでしょう。
定期的に敷地内や駐車場を巡回する
定期的に敷地内や駐車場を巡回することも無断駐車の防止につながります。無断駐車を早期に発見することで、速やかに対応することが可能です。
また、巡回中に入居者とコミュニケーションを取ることで、無断駐車する車や所有者に関する情報収集にもつながります。
無断駐車に対する適切な対処方法
もし無断駐車を発見したら、どのような対処法を行えばよいのでしょうか?オーナーや不動産管理会社ができる対処法は以下のとおりです。
- 車両・ナンバーなどを記録して警告文を貼る
- 所有者を特定して注意喚起を行う
- 必要に応じて警察に通報する
- 無断駐車への最終手段は訴訟
- 所有者がわからず長期間放置される場合は「遺失物」で対応
- 入居者にも無断駐車を発見したときの対処方法を伝えておく
それぞれの対処方法について、詳しく解説していきます。
車両・ナンバーなどを記録して警告文を貼る
法的な対応も視野に入れ、無断駐車している車の車種・ナンバーを記録しておくことが大切です。日付や駐車期間などもリスト化しておくとよいでしょう。
無断駐車の車両に対しては、警告文を紙に書き、それを車のワイパーに挟んで通知する方法が効果的です。ただし、警告文を直接車に貼り付ける際にテープを使用すると、車の塗装が剥がれる恐れがあります。場合によっては、器物損壊にあたり、損害賠償請求をされるといったことも考えられるので注意が必要です。
所有者を特定して注意喚起を行う
無断駐車の証拠として、車のナンバーや私有地放置車両関係位置図を準備することで、陸運局に所有者情報の開示請求を行うことができます。私有地放置車両関係位置図は、私有地に放置された車両の位置を示すもので、地方運輸局のウェブサイトからダウンロードし作成することが可能です。
車の所有者に対しては、請求金額や被った迷惑の内容を記載した内容証明郵便を送ることで、正式な注意を促すことができます。内容証明郵便を利用することにより、郵便を送付した事実を証明できるため、訴訟の際に有利に働く可能性があるでしょう。
必要に応じて警察に通報する
同じ車が何度も同じ場所に無断駐車している場合、不審車両として警察に相談してみるのも一つの方法です。警察は基本的に民事不介入ですが、不審車両であれば、盗難車である可能性も踏まえて、所有者を調べるといったケースもあります。
また、盗難車ではなかった場合でも、警察が直接所有者に連絡を取ってくれるケースもあるため、必要に応じて通報・相談してみるのもよいでしょう。
無断駐車への最終手段は訴訟
内容証明を使って注意喚起をしているにもかかわらず、いつまでも解決しない場合は民事訴訟による損害賠償請求、または車両撤去土地明け渡し請求を行います。訴訟の手続きはオーナー本人が行うことも可能ですが、複雑な手続きも多いため、弁護士に相談や代行を依頼した方が安心でしょう。
弁護士に相談すれば法的なサポートを受けられ、裁判に勝つ可能性が高まりますが、すべてのケースで高額な損害賠償を得られるわけではありません。場合によっては、裁判費用や弁護士に支払う報酬でコストが高くついてしまうこともあるので、注意が必要です。
所有者がわからず長期間放置される場合は「遺失物」で対応
無断駐車の車両にナンバープレートがない場合、所有者の特定が難しくなります。
このような場合の対処方法として覚えておきたいのが、「遺失物」として警察に届け出ることです。無断駐車の車やバイク、自転車などを遺失物として届け出ると、3カ月以上所有者が現れなければ、その車の所有権が届け出をした人に移ります。そうなれば、放置された車両を正式に廃棄処分することが可能です。
入居者に無断駐車を発見したときの対処方法を伝えておく
マンションやアパートの入居者や駐車場の契約者に対し、無断駐車があった場合は管理会社へ連絡してもらうことを周知しておきましょう。
その際、警察は基本的に民事には介入しないため、対応してもらうことが難しいこと、また、無断駐車された車を勝手に動かすと自力救済禁止の原則に反し、さらに大きなトラブルを招く可能性があることも、合わせて説明しておきましょう。
無断駐車以外に起きやすい駐車場のトラブルと対処方法
マンションやアパートの駐車場では、無断駐車以外にもさまざまなトラブルが起こり得ます。例えば以下のトラブルです。
- 物損事故
- はみ出し駐車
- 幅寄せ
- 車上荒らし
これらのトラブルに対する対処法についても知っておきましょう。
物損事故
他の入居者の車にぶつける、壁や塀などを擦るといった物損事故は基本的に当事者同士の話し合いで解決するケースがほとんどです。オーナーや不動産管理会社などが責任を追及されることはあまりありません。
予防策としては、駐車場内やエントランスに注意喚起の掲示を行うことや、防犯カメラの設置が効果的です。また、物損事故が発生した場合、規模に関わらず警察への報告が義務付けられていることを入居者に伝えておくことも大切です。
はみ出し駐車
はみ出し駐車があると、隣接する駐車スペースに駐車できない状態になるため、入居者同士のトラブルになりがちです。
はみ出し駐車への対応は、オーナーや不動産管理会社が行うのが一般的です。注意喚起に加えて、巡回を増やすといった対策も有効です。また、車が歩道や車道にはみ出している場合、道路交通法違反に該当する可能性があるため、警察に相談するのも一つの方法といえるでしょう。
幅寄せ
駐車スペースの白線の左右いずれかにギリギリまで寄せて駐車すると、隣の駐車スペースへの駐車ができない、もしくは駐車が難しくなります。場合によっては事故に発展するケースもあるでしょう。
このような幅寄せ駐車の対策としても、オーナーや不動産管理会社による注意喚起が重要です。ポスターの掲示や巡回を通じて幅寄せ駐車を防止するよう促しましょう。また、可能であれば駐車場の区画を広くすることも効果的です。
車上荒らし
車上荒らしは、他のトラブルとは異なり刑法上の犯罪です。そのため、事件が発覚した際には、速やかに警察に通報する必要があります。
日本国内では、車上荒らしが22時から9時の間に発生することが多いといわれています。防犯対策としては、夜間も撮影できる防犯カメラや、常夜灯、センサーライトを設置することが効果的です。
無断駐車は放置せず速やかに対応しよう
今回は、無断駐車や駐車場で起こり得るトラブルへの対処法について解説しました。入居者から無断駐車の報告があった場合は、適切な方法で迅速に対応することが大切です。また、トラブルの報告や対応履歴をまとめておくことで、次回同じような問題が発生した際にもスムーズに対処できるようになります。
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それぞれのサービスには独自の特徴があるため、うまく組み合わせて、入居者の満足度を高める不動産管理サービスを提供しましょう。