集合住宅に住む場合は毎月の管理費の支払いが必要です。共益費と呼ばれることもありますが、なぜ入居者から管理費を徴収する必要があるのでしょうか?とくに賃貸物件の管理費は、入居者からの問い合わせに適切な回答を返すことができないと、場合によっては管理費の支払い拒否といった事態を招くかもしれません。
そこで今回は、入居者から毎月徴収する管理費について、その相場や用途をご紹介します。アパートやマンションの管理費がどのような用途で使われているのかを知りたい方は参考にしてみてください。
賃貸経営における「管理費」とは?
まず、賃貸物件における管理費について見ていきます。管理費はどのような用途で入居者から徴収して、使われているのでしょうか?ここでは、賃貸管理費の特徴、賃貸と分譲の管理費の違いなどを解説します。
賃貸管理費の特徴
賃貸物件における管理費は、設備や共用部分の管理・維持に必要な費用です。不動産公正取引協議会連合会の「不動産の公正競争規約」では、管理費は以下のように定義されています。
「マンションの事務を処理し、設備その 他共用部分の維持及び管理をするために必要とさ れる費用をいい、共用部分の公租公課等を含み、 修繕積立金を含まない。」
さらに、建物内のゴミ置場の清掃や管理、インターネットテレビ回線の使用料などにも管理費が使われます。
共益費・修繕積立金との違い
家賃の明細書で、管理費の他に「共益費」や「修繕積立金」という項目を見たことがある方もいるでしょう。不動産公正取引協議会連合会の「不動産の公正競争規約」では、「共益費は借家人が共同して使用もしくは利用する設備、施設の運営および維持に関する費用」と定義されています。
管理費と共益費は一見すると異なるようですが、実際には明確な区別がない場合が多く、同じ意味で使われることもあります。また、「管理費・共益費」とまとめて表記されることもあります。
一方、修繕積立金は分譲マンションの大規模修繕や事前診断のための費用です。毎月決まった金額を積み立て、将来的な修繕工事に備えます。金額は長期修繕計画に基づいて決定されます。
賃貸と分譲で異なる管理費の取り扱い
賃貸と分譲では、管理費の決定権者が異なります。賃貸では建物の所有者(オーナー)が決定しますが、分譲では入居者で構成される管理組合が決定します。
また、管理費の設定根拠も異なります。分譲の場合、実際に必要な金額から管理費が算出されますが、賃貸では管理にかかる実費や賃料、周辺物件の相場から管理費が決定されることもあります。
言い換えれば、賃貸の管理費はオーナーの判断で決まり、家賃の一部と見なすこともできるということです。実際に、管理費を家賃の一部として徴収することもあります。一方、分譲の管理費は管理組合が規定した管理規約に基づいて決定されます。各管理組合の管理規約は国交相の「標準管理規約」に準拠しており、ルールや基準が確立されている点が賃貸との違いです。
毎月支払う管理費の平均相場
賃貸物件では、毎月どれくらいの管理費を支払うのでしょうか?ここでは、管理費の平均相場をご紹介します。
管理費の平均相場は賃貸と分譲で異なる
管理費の平均相場は、賃貸物件か分譲物件かによって異なります。賃貸物件の場合、管理費は通常家賃の5~10%程度に設定されていることが多いです。例えば、アパートの場合は3,000円程度、マンションの場合は5,000円程度から、物件によっては1万円を超える場合もあります。
一方、分譲物件の管理費は平均して15,000円程度です。この金額には幅があり、宅配ボックスや防犯カメラ、エレベーターの有無などの設備や物件の戸数によって変動します。これは賃貸物件でも同様です。
同じ建物でも住戸によって管理費を分けているケースもある
同じ建物内でも、住戸によって管理費が異なるケースもあります。その理由には、「住戸の専有面積」と「入居のタイミング」が挙げられます。
専有面積が大きい住戸は、物件全体の戸数が減少する一方、管理にかかる費用は大きく変わらないため、専有面積が広い住戸には応分の負担を求めることが一般的です。
また、入居のタイミングによっても管理費が異なることがあります。閑散期に入居する場合、空室を減らすために管理費が低く設定されることがあります。
管理費ゼロの賃貸物件もある
管理費ゼロの賃貸物件も存在します。これは管理費を徴収しない代わりに、家賃にその分が含まれているケースです。管理費ゼロの物件は一見、家賃が安く見えるため、入居者募集の際に「物件の強み」として訴求される傾向にあります。
しかし、実際には家賃が相場よりも高く設定されていることが一般的です。ただし、会社から家賃補助を受けている場合、管理費も含めた全額が補助の対象となるため、入居者にとっては管理費を気にせずに済むメリットがあります。
管理費が高くなる要素
賃貸物件の維持・管理費には、具体的な基準や決まりは存在しません。そのため、物件によって管理費が高い場合と安い場合があります。
とくに、設備や仕様が充実している物件は管理費が高くなる傾向があります。例えば、オートロックや無料インターネットといった設備がある場合です。とくにエレベーターは、その設置や維持にかかる費用が管理費の大部分を占めるため、エレベーターの有無によって管理費が大きく変動します。
また、分譲マンションの一室を賃借する場合も管理費が高くなることが多いです。これは、コンシェルジュやトレーニングジムなど、分譲マンション特有の充実した設備があるためです。これらの設備が管理費を上昇させる要因となります。
管理費の主な用途
管理費が適正な金額なのか、正しい用途で使われているかについては、支払っている入居者にとって最も気になるところです。ここでは、入居者からの問い合わせも多いと考えられる管理費の主な用途について解説します。
共用部の保守・メンテナンス
安全で快適な暮らしを維持するためには、共用部の保守やメンテナンスが不可欠です。アパートやマンションにはさまざまな設備や機器が備えられており、正確に動作させるためには定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスを怠ると、安全性が確保できないだけでなく、建物や設備の劣化が早まります。
共用部の清掃
共用部の清掃には、日常的な清掃と定期清掃があります。日常清掃は、掃き掃除やゴミ拾いなどを行い、清潔で快適な住環境を維持することを目的としたものです。対象となるのは、ゴミ置場、玄関ホール、階段などとなります。
一方、定期清掃は清掃業者に依頼し、日常清掃では落としきれない汚れを特殊な洗剤や器具を用いて行います。対象となるのは、共用部の床、壁、窓などです。
共用部の水道光熱費
管理費は、共用部の維持管理費用にも充てられます。廊下、階段、エレベーターなどの清掃や点検に使われる他、共用部で使用される電気代や電球の費用も含まれるのが一般的です。分譲マンションの場合、エントランスに設置されたトイレの水道代も管理費で賄われます。
管理員の人件費・管理業者の委託費用
管理員の人件費も管理費に含まれます。また、コンシェルジュが設置されている場合、その人件費も管理費に加算されます。さらに、自主管理の場合と不動産管理業者に管理を委託する場合では、後者の方が、管理費が高くなるのが一般的です。
植栽管理
物件周辺に植栽がある場合、その管理にも管理費が使われます。定期的な剪定や整姿を行い、物件周辺の環境美化を図るのが目的です。
管理会社は植栽業者に依頼して、木の葉や枝の剪定、雑草や害虫の除去、肥料や薬剤の散布などを行います。植栽管理を怠ると、入居者だけでなく、隣家や通行人からのクレームにつながる可能性もあるため、必要な費用といえるでしょう。
管理費の支払いに関するよくある疑問
賃貸管理に欠かせない管理費は、どのような方法・タイミングで徴収されるのでしょうか?ここでは、管理費の支払いに関するよくある疑問と回答を紹介します。
管理費はどのタイミングで支払うのか?
管理費は毎月の家賃と一緒に支払います。主な支払い方法は口座引き落としですが、指定口座への振り込みやオーナーや管理会社への手渡しもあります。
指定口座から自動引き落としの場合、残高不足で支払いができないこともあるでしょう。この場合、家賃だけが引き落とされ管理費は引き落とされない(もしくはその逆)ということはなく、全額が引き落とされません。
入居者が管理費の支払いを拒否するとどうなる?
「管理費が高い」「管理費を支払えない」といった理由で入居者が管理費の支払いを拒否するとどうなるのでしょうか?
基本的に管理費は家賃と合わせて支払わなければなりません。賃貸物件の場合、支払いを拒否すると賃貸契約の解除がされる可能性があります。また、管理状態に不満があっても、支払いの拒否はできません。
分譲マンションの場合、所有者は管理組合に加入することが義務付けられています。管理組合には区分所有法に基づいた独自のルールがあり、加入した時点でこれらの規約を守る義務が生じます。賃貸同様、管理費の支払いは必須であり、部屋を手放すまで続けなければいけません。
管理費の値下げ交渉に応じる必要はある?
「物件の設備が十分ではないので管理費を値下げして欲しい」「掃除が行き届いていないのに管理費が高い」などの声が入居者から上がった場合、値下げに応じる必要はあるのでしょうか?
管理状態に不満があっても、値下げの要求に応じる必要はありません。しかし、オーナーの判断で値下げ交渉に応じることは問題なく、話し合いによって問題を解決する努力が大切です。
不動産管理会社に管理を委託するメリット
賃貸物件をオーナー自身ですべて管理するのは手間暇がかかります。そのため、不動産管理会社に管理を委託することを検討するのもおすすめです。
ここでは、不動産管理会社に賃貸物件の管理を委託するメリットをご紹介します。
管理業務を行わなくて良い
不動産管理会社に委託することで、物件の管理業務を自分で行う必要がなくなります。
賃貸管理には、細かな事務作業から入居者のクレーム対応まで、さまざまな業務があります。オーナー自身で賃貸経営をする場合、これらの業務はとくに大きな負担となるでしょう。
管理会社に委託すれば、これらの業務をプロに任せることができ、オーナーの負担を軽減するとともに、物件の適切な管理が期待できます。
管理方法について学べる
賃貸経営の初期段階では、不動産管理に関する知識や経験が不足し、入居者からのクレーム対応や空室対策に悩むことも少なくありません。不動産管理会社に管理を依頼すると、不動産に関する知識だけでなく、経営や法律に関する知見を活かした適切で効率的な賃貸管理を行ってくれます。また、プロの知識やノウハウを学ぶことも可能です。
遠方にある物件も管理してもらえる
生活圏から離れた場所に物件を所有している場合、オーナー自身が頻繁に通って管理するのは難しいことがあります。そんなときは、不動産管理会社に委託することで、移動時間やコストを省くことができます。
空室リスクを軽減できる
不動産管理を委託すると、空室リスクの軽減も期待できます。オーナーが一人で管理業務をすべてこなそうとすると、管理が行き届かずに空室が増える可能性もあるでしょう。
プロに賃貸管理を任せれば、適切な管理体制を整えることができ、入居者の満足度向上につながります。これにより退去率が減少し、空室リスクの軽減が期待できるでしょう。
賃貸管理業務は『いい生活賃貸管理クラウド』で一元管理しよう
管理費とは、建物の共用部分の維持や管理に必要な費用ですが、入居者にとっては負担となります。管理状態と金額のバランスが取れていないと、不満やクレームが発生しやすくなり、場合によっては管理費の支払い拒否や退去にまで発展することもあります。そのため、慎重な対応が必要です。
こうした事態を防ぐためには、管理費の運用も含めた賃貸管理のサービス品質向上が重要です。業務効率化はもちろんのこと、事務的なミスの減少やスムーズな契約プロセスの実現によって、入居者の満足度を高めることが求められます。
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