賃貸不動産経営管理士は、注目が高まっている国家資格です。さまざまな不動産関連の資格がある中で、賃貸不動産経営管理士の資格取得を検討している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、賃貸不動産経営管理士とはどのような資格かを解説し、仕事内容や取得するメリット、必要なスキルなどもわかりやすく解説します。
賃貸不動産経営管理士とは?主な役割
賃貸不動産経営管理士とは、賃貸住宅の管理に関する知識や技術を持つ専門家です。賃貸住宅管理業の「業務管理者」の要件となる国家資格として認められています。
賃貸不動産経営管理士は、入居審査から退去・更新までの長期間にわたる業務を専門としており、入居者が安心して生活する手助けに加えて、賃貸物件のオーナーが資産を有効活用できるようにサポートするなど、重要な役割を担います。
※参考:一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会 受付センター|賃貸不動産経営管理士資格について
賃貸不動産経営管理士になるには?
賃貸不動産経営管理士になるための流れは次のとおりです。
- 賃貸不動産経営管理士試験に合格する
- 賃貸不動産経営管理士に登録する
順に説明します。
賃貸不動産経営管理士試験に合格する
賃貸不動産経営管理士になるためには、毎年11月の第3日曜(年1回)に実施される「賃貸不動産経営管理士試験」に合格しなければなりません。合格率は20〜30%程度で推移しており、難易度は少し高めといえます。
試験に関する情報は以下のとおりです。
試験日時 | 毎年11月の第3日曜 |
試験会場 | 受験票に記載 |
受験資格 | 日本国内に居住していること |
受講料 | 12,000円(税込) |
出題形式 | 50問 四肢択一 |
申込方法 | 郵送・インターネット |
申込期間 | 8月から9月下旬 |
合格発表 | 12月 |
※参考:一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会 受付センター|令和5年度 賃貸不動産経営管理士試験実施要領(国土交通大臣登録試験)
以下の記事でも詳しく紹介しているので参考にしてください。
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貸管理業務に必要な資格とは?賃貸管理士の役割や試験概要を解説
賃貸不動産経営管理士に登録する
試験に合格後、資格登録することで賃貸不動産経営管理士として業務が行えるようになります。資格登録に関する情報は以下のとおりです。
登録の要件 | ・管理業務に関し2年以上の実務経験・その実務の経験を有する者と同等以上の能力を有する ※要件を満たしていない方は「賃貸住宅管理業務に関する実務講習」を修了すると実務経験の要件を満たせます。 |
資格登録料 | 6,600円(税込) |
試験合格後、1年以上が経過してから賃貸不動産経営管理士の資格登録を行う方は、資格登録の手続きの前に「賃貸不動産経営管理士登録講習」を受講する必要があります。
※参考:賃貸不動産経営管理士の登録手続き-賃貸不動産経営管理士(賃貸不動産における専門家の資格)
賃貸不動産経営管理士の仕事内容
賃貸不動産経営管理士は、市場調査や入居者のサポート、賃貸不動産の管理業務などさまざまな仕事があります。ここからは、具体的な仕事内容を紹介します。
市場調査
不動産のオーナーから管理業務の依頼を受け、近隣の家賃相場などを調査し、その賃貸住宅に合った適正価格を提案します。
また、家賃提案の際に「バリアフリー住宅のご提案」など、賃貸用建物を市場に出すための企画提案をすることもあるでしょう。ターゲット層のニーズに合っていない賃貸住宅を市場へ出しても入居者をうまく集められないため、ニーズに沿った物件となるよう提案します。
入居者の募集から契約の締結までのサポート
賃貸不動産経営管理士は、入居者の募集から契約の締結、入居者の信用調査といった業務も担当します。入居を希望する方に対して、物件の紹介や内覧の提案、契約条件の交渉や賃貸契約書の作成など、契約締結までをサポートするのも仕事内容の1つです。
中でも、入居者の信用調査は重要です。家賃を納めてくれない、ルールやマナーを守らないといった方を入居させてしまうと、トラブルの原因になってしまいます。そこで、賃貸不動産経営管理士が入居者について確認し、オーナーに助言します。
管理業務
賃貸不動産経営管理士は、入居者や不動産に関するさまざまな管理業務も担います。主な業務内容は次のとおりです。
- 建物の定期的なメンテナンス
- 修繕・掃除
- 入居者からの要望やクレーム対応
- 家賃の徴収
- 契約の更新
- 賃料の改定
- 退去の立ち会い
- 敷金の精算
- 原状回復工事の指揮
- 空室維持管理など
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理に関する幅広い業務を行い、適切な管理と消費者の安心・安全な生活を支える重要な役割を担っています。しかし、業務量が多いため、すべてを管理するには時間や労力も必要です。
そこで、賃貸不動産経営管理士の業務に役立つのが一元管理システムの導入です。中でも『いい生活のクラウドSaaS』は管理業務に必要なさまざまな情報を一元化できるため、時間がかかる事務作業を効率化できます。詳しくは次の記事を参考にしてください。
賃貸不動産経営管理士の将来性
賃貸不動産経営管理士の将来性は高いといえるでしょう。その理由は2つあります。
- 国家資格化によるニーズの増大
- 大規模事業所における設置義務要件の存在
賃貸不動産経営管理士は、2021年4月から国家資格として認められています。近年の賃貸住宅を希望する方の増加も相まって、資格取得のニーズも高まるでしょう。
また、賃貸住宅管理業法では、200戸以上の賃貸管理を行う場合は事業者の登録が必要です。事業者は、営業所か事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識・経験などを持つ業務管理者を1名以上配置することが求められており、賃貸不動産経営管理士も「管理士の資格を持った賃貸管理業経験者」に該当します。
※参考:賃貸住宅管理業法ポータルサイト|業務管理者 について
賃貸不動産経営管理士を取得するメリット
賃貸不動産経営管理士を取得する主なメリットは、次の4つがあげられます。
- 不動産業界に就職しやすくなる
- 賃貸住宅管理の基本的な知識・スキルが身につく
- プライベートでも役に立つ
- 不動産会社を起業する際に使える
それぞれ詳しく見ていきましょう。
不動産業界に就職しやすくなる
賃貸不動産経営管理士の資格を持っていることで、不動産業界への就職・転職に有利に働くでしょう。国家資格であるため、賃貸住宅管理業務に関する高い専門知識やスキルを持っていることを証明できます。
とくに、賃貸管理業務を扱う会社では、資格取得者が優先的に採用される場合があります。賃貸の管理業務ができる唯一の資格であるため、即戦力になれる可能性も高いでしょう。
また、企業によっては資格手当や昇進などの足掛かりになるのもメリットといえます。
賃貸住宅管理の基本的な知識・スキルが身につく
賃貸不動産経営管理士の資格を取得するためには、賃貸管理業務全般を学ぶ必要があります。資格取得を目指す中で、賃貸住宅管理に必要な法律や経済、税制や建築法規などの幅広い知識を身につけることが可能です。
幅広い知識があると、実際の不動産管理業務においてさまざまな問題の解決やクレームへの対応、効率的な業務に役立ちます。また、入居者からの質問に対しても的確に答えられることで信頼関係も築きやすくなります。
とくに、敷金礼金や更新料など、料金に関するトラブルは珍しくありません。このようなトラブルを適切に処理できるようになり、スムーズな対応が行えます。
プライベートでも役に立つ
賃貸不動産経営管理士の資格を取得するために得た不動産の知識は、自身のプライベートにおいて不動産を賃貸する際にも役立ちます。
自分が賃貸物件を借りる立場のときに、きちんとした管理が行われている物件であるか見極めやすくなります。また、不動産投資を行う際にも、賃貸借契約に関連する法律や建物・設備の基礎知識があると、納得のいく投資判断ができるでしょう。
不動産会社を起業する際に使える
賃貸不動産経営管理士の資格は、不動産会社を起業する際にも有効に働きます。賃貸住宅管理業においては、1事務所につき1名以上の業務管理者を設置することが定められています。そのため、不動産会社を起業したいと考えているなら、資格取得の重要性は非常に高いといえるでしょう。
また、宅地建物取引士の資格をあわせ持つことで、貸主と借主の両方をサポートする事業も可能です。
賃貸不動産経営管理士とその他の資格との違い
不動産に関する資格は、賃貸不動産経営管理士のほかにもさまざまな資格があります。ここでは、宅地建物取引士、マンション管理士・管理業務主任者との違いを紹介します。
宅地建物取引士との違い
賃貸不動産経営管理士と宅地建物取引士の違いは以下の表のとおりです。
賃貸不動産経営管理士 | 宅地建物取引士(宅建士) | |
主な業務 | ・市場調査・入居者の募集から契約の締結・賃貸住宅の管理・建物の修繕手配や入居者の要望、クレーム対応など | ・不動産の売買・賃貸物件のあっせんなど |
独占業務 | 業務管理者 | ・契約締結前に行う重要事項の説明・重要事項説明書面(35条書面)への記名・契約内容を記した書面(37条書面)への記名 |
事務所への配置人数 | 1人以上 | 従業員5人につき1人以上 |
賃貸不動産経営管理士は、貸主をサポートする業務がメインです。一方、宅地建物取引士は、借主をサポートする役割を担います。ただ、賃貸住宅管理業者が宅建業を兼業していることがほとんどです。
両方の資格をあわせ持つことで、両方の業務を一貫して行えます。
※参考:一般財団法人 不動産適正取引推進機構|宅建試験の概要
マンション管理士・管理業務主任者との違い
賃貸不動産経営管理士とマンション管理士・管理業務主任者との違いは、業務対象です。賃貸不動産経営管理士は「賃貸物件」を業務対象にしており、オーナーから管理業務を委託された管理会社で賃貸物件管理業務を行います。
一方、マンション管理士・管理業務主任者は「分譲マンション」を業務対象にしており、分譲マンション購入者で構成される管理組合側に立って、助言やコンサルティングを行うことが主な業務です。
より厳密に言うと、マンション管理士は管理組合側、管理業務主任者は管理組合から委託された管理会社側で分譲マンションの管理業務を行います。
※参考:公益財団法人マンション管理センター|マンション管理士試験
賃貸不動産経営管理士が身につけたいスキル
賃貸不動産経営管理士として活躍するためには、さまざまなスキルが求められます。賃貸不動産経営管理士が身につけたいスキルとして、次の5つを紹介します。
- 不動産に関連する知識
- コミュニケーション能力
- マーケティング能力
- 情報収集能力
- 事務処理能力
それぞれ具体的に解説します。
不動産に関連する知識
賃貸不動産経営管理士は、市場調査や入居者調査、管理業務などさまざまな業務を行います。それぞれの業務を的確に行うためには、不動産に関する豊富な知識が必要です。
しかし、不動産に関連する知識は多岐にわたります。契約や手続きの際には法律の知識、経営や経営をサポートしていく際には会計や税務の知識も必要です。
コミュニケーション能力
賃貸不動産経営管理士は、物件の管理能力だけでなく、コミュニケーション能力も求められます。不動産の管理業務では、オーナーや入居希望者、工事やメンテナンスに関わる業者など、さまざまな人とコミュニケーションを取る機会が豊富にあるからです。
要望やクレームに対して適切に対応できなければ入居者が退去してしまう可能性もあるでしょう。このように、トラブルを円滑に解決するコミュニケーション能力も必要です。
マーケティング能力
賃貸不動産経営管理士には、賃貸物件を効果的に宣伝するためのマーケティングスキルもあるとよいでしょう。入居者がいなければ家賃収入は入らないため、オーナーにとって空室があるのは避けたい状況です。
そこで、ターゲット市場の分析や広告戦略の立案、オンラインマーケティングやブランディングなどが賃貸不動産経営管理士に求められます。チラシ広告やウェブ広告など、ターゲットに合わせてどの広告周知手段を選ぶとよいか提案できると望ましいでしょう。
情報収集能力
賃貸不動産経営管理士として、情報収集能力もほしいところです。不動産市場は常に変動しているため、新しい法律や市場のトレンド、競合他社の動向など、最新の情報を常に把握しておかなければいけません。
人気の物件情報や補助金の制度など、さまざまな新情報が日々生まれますし、不動産に関する法律は数年おきに改定されています。そのため、情報収集ができていなければトラブルにつながりかねません。
賃貸不動産経営管理士にとって情報収集は業務遂行の基本であり、顧客の満足度や収益の向上など、さまざまなメリットをもたらします。
事務処理能力
事務処理能力は、日々の業務を効率的かつ円滑に進めるためには不可欠といえるでしょう。事務処理能力を支えてくれる一元管理システムがあれば、複雑な事務作業の効率化や、ミス、トラブルの防止も期待できます。
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賃貸不動産経営管理士の業務はシステム導入で効率化しよう
賃貸不動産経営管理士は賃貸の不動産についての管理業務を行います。その業務は入居者へのサポートのほか、契約書の作成や賃料の管理、物件の保守管理などさまざまです。多岐にわたる業務を効率的かつ円滑に進めるためには、事務処理能力は必須といえるでしょう。
一元管理システムを導入すれば、複雑な業務を効率化できるとともに人為的なミスの予防にも役立ちます。とくに、クラウドSaaS賃貸管理システム『いい生活賃貸管理クラウド』はクラウド型であり、初期費用を抑えながら導入が可能です。低コストで賃貸管理システムでの効率化を図りたい方は、お気軽にご相談ください。