
告知事項あり物件とは、過去に何らかの瑕疵や問題があった物件のことをいいます。消費者が「安心して快適に暮らす」という本来の目的を達せられないような瑕疵や問題がある場合は、不動産会社は消費者に対してその旨を告知する義務があります。
その一方で、告知事項あり物件は相場よりもリーズナブルなことが多く、一定の消費者ニーズがあるため、告知事項について理解を深めることが求められます。
そこで今回は、告知事項の種類と、消費者にとってのリスクをご紹介します。また告知事項あり物件を紹介・広告する際のポイントや注意点についても解説します。
告知事項あり物件とは?

告知事項あり物件とは、過去に何らかの事故や事件が発生した物件や、今現在も問題を抱えている物件のことで、事故物件と呼ばれることもあります。
告知事項の内容や種類によっては、消費者は購入もしくは賃貸を断念する可能性があるため、消費者保護の観点から宅建業法によって告知することが義務付けられています。
告知事項の種類

告知事項は、物理的・環境的・心理的・法的瑕疵の4つに分類されます。ここでは、それぞれの瑕疵について解説します。
①物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、土地や建物に物理的な不具合や欠陥、問題がある状態をいいます。例えば、建物に雨漏りやシロアリの被害が生じている場合など、消費者が通常期待する使用や価値を損なう原因となるものが該当します。
具体的には、以下の通りです。
- 雨漏り
- シロアリによる被害
- 建物の傾き
- 給排水管の故障
- 耐震強度の不足
- 地盤沈下
- 土壌汚染
- 地中に埋設物(産業廃棄物や浄化槽など)がある
②環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、対象不動産そのものの瑕疵ではなく、住環境に問題がある状態をいいます。例えば、周辺環境が原因で消費者の生活に支障をきたす場合や、対象不動産の資産的価値を下げてしまうような騒音や振動、悪臭、日当たりや眺望の悪化が該当します。
具体的には、以下の通りです。
- 嫌悪施設(墓地・火葬場・高圧線の鉄塔など)が近くにある
- 下水道処理場やゴミ処理場が近くにあり、悪臭が発生している
- 線路や高速道路、航空ルートが近く、騒音や振動が発生する
- 教育上好ましくない施設(パチンコ店など)がある
- 隣地に高層マンションの建築予定があり、日当たり・眺望が悪くなる
③心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、消費者が心理的に嫌悪や抵抗を感じるような欠陥があることをいいます。例えば、過去に自殺や他殺、ニュースになるような事件があった建物などが該当し、事故物件と呼ばれることもあります。
具体的には、以下の通りです。
- 入居者が自殺をした住戸
- 凄惨な殺人事件が起きたことでニュースになった住宅
- 孤独死だったため長期間遺体が放置され、特殊清掃が必要になった住戸
- 原因不明の火災によって家族全員が亡くなり、近所で有名な建物
心理的瑕疵にあたるのか、判断が難しいケースもあるかもしれません。しかし、消費者の購入や賃借の判断にあたって、重要な影響を及ぼす可能性がある瑕疵であれば、原則告知が必要になります。ただし一般的な病死や自然死については、告知義務はありません。
④法的瑕疵
法的瑕疵とは、建築基準法や都市計画法、消防法などの法律や条令に違反していることをいいます。法律や条令に従っていないことで、使用制限や売却が難しいなど、消費者にとって不利益が発生している状態です。
具体的には、以下の通りです。
- 接道義務を果たしていないため、再建築できない物件
- 容積率等の制限を超過しており、建て替え時には現在の大きさを維持できない住宅
- 消防設備(火災報知器・配線設備)が設置されておらず、消防法に違反している住戸
告知事項あり物件の消費者にとってのリスクとは?

告知事項あり物件は、内容や程度によってはリフォームやリノベーションで改善できることがあり、相場価格よりもリーズナブルなことが多いことからメリットととらえる消費者もいます。
しかし、心理的な抵抗感を感じる方が多いことが一般的です。そのため、告知事項の理解を促し、メリット・デメリットをしっかりと把握してもらうことが重要です。ここでは、告知事項あり物件の消費者にとってのデメリット・リスクをご紹介します。
心理的な抵抗感
消費者の多くは、過去に殺人事件が起きた住戸や、近隣に火葬場や墓地がある住宅に居住することに抵抗を感じることが一般的です。
ただし、感じ方や捉え方には個人差があるため、事件の詳細や嫌悪施設との位置関係を説明することで、購入や賃貸に踏み切る方もいるでしょう。告知すべきかどうかについては自己判断はせず、誠実に説明することが大切です。
住宅ローン審査が通りにくい
告知事項の内容によっては不動産の担保評価が低くなり、住宅ローン審査が厳しくなることがあります。
住宅ローンは契約者の年齢や収入だけでなく、物件の担保価値もチェックされます。万が一返済が難しくなったときは、物件を競売にかけて、ローンの残高を回収するためです。
その際、再建築不可物件や土壌汚染された土地は、一般的な物件よりも資産価値が低くなる傾向があります。また、死亡事故や建物の欠陥などで、売却が難しいと金融機関に判断されると、希望する額の住宅ローンを借入れできないことがあります。
将来的な売却リスク
告知事項があることで、将来的な売却リスクが生じる可能性があります。物件に欠陥や瑕疵があることで、市場価格よりも低い価格になるおそれがあり、買主が見つかりにくい状況になることが想定されます。
また、買主が見つかりにくいことで、売却期間が長期化する可能性も考えられます。その場合、住み替えがなかなか進まず、管理費や税金などの経済的な負担が増えることになるでしょう。売却する予定が特にないという場合でも、売却におけるリスクがあることをあらかじめ伝えておく必要があります。
消費者ニーズに応えるためのポイント

不動産仲介においては、顧客との間に信頼関係を築くことが重要です。告知事項あり物件では、顧客が抱える不安や疑問が通常の物件よりも多く、深いものになりがちですので、顧客に寄り添う姿勢がより求められるといえます。
ここでは、消費者と認識の齟齬が発生しないようにするために、慎重かつ丁寧な説明や対応を心がけるべきポイントについてご紹介します。
情報開示を誠実に行う
告知事項の内容や程度によっては、物件の価値を大きく下げるおそれがあり、住み心地にも影響します。
不動産会社は、消費者に対して告知事項を正確かつ詳細に伝える義務があります。しかし、事実を単に伝えればよいということではなく、消費者の理解を深めるためにも、発生した時期や状況、現状、告知事項による影響などを丁寧に説明することが求められます。
また推測で説明することは避け、調査によって把握した情報を正確に伝えることが大切です。資産価値が下がるのであれば、その旨も説明し、売却が難しいといったネガティブな情報についても正確かつわかりやすくお伝えするようにしましょう。
消費者の立場に立ったコミュニケーション
告知事項はセンシティブな内容であることも多く、説明を受けた消費者にとって心理的に大きな負担になることもあるでしょう。
そのため、告知事項を説明する際は消費者の表情を読み取ることを心がけ、不安や疑問に寄り添いつつ、消費者の理解を促すことが大切です。
賃貸や購入の判断に時間がかかったとしても、返答を急いではいけません。最終的な判断は、消費者が自由に選択できる環境を整えるようにしましょう。
関係各所との報連相を徹底する
告知事項に関する情報は、売主から提供された内容だけでなく、不動産会社も積極的に調査したうえで、消費者に告知することを心がけましょう。
告知事項の内容に応じて、警察署や消防署、自治体などへ問い合わせるのもおすすめです。また不動産会社間で情報を共有することや、弁護士や建築士に相談する方法もあります。
ただし、不動産会社が必要以上の調査を行う義務はありません。例えば、事件事故の遺族や関係者に聞き取りを行う場合は、過度な聞き取りは避け、相手の名誉に配慮し、平穏な生活を脅かすことがないようにします。あくまでも、慎重な対応を心がけることが大切です。
告知事項の種類と程度に応じた対応
告知事項は、殺人や自殺などの人の生死がかかわるような内容から、建築基準法違反まで種類や程度もさまざまです。
例えば、死亡事故であれば、事故の内容や状況、経過年数などを考慮し、消費者の心理的な負担を最小限に抑えるような説明を心がける必要があります。その一方で、事実は伝えなければならず、内容を歪めるような告知であってはなりません。
また、建築基準法に反している物件であれば、専門的な知識がない方にもわかるように説明する必要があります。居住するのにあたってどのような影響があり、将来の売却リスクなども含めて丁寧な説明を心がけましょう。
告知事項に関する記録の作成と保管
告知事項は、消費者に対して口頭で説明すれば事足りるというわけではありません。後々のトラブルを避けるためにも、書面(重要事項説明書)に記載して説明することが大切です。契約を締結する時点で、重要事項説明書に記載したうえで再度説明することになります。
ただし告知にあたっては、プライバシーへの配慮から、亡くなった方の氏名や年齢、住所、家族構成などの詳細を説明する必要はありませんので、書面に告知事項を記載する際は注意が必要です。
告知事項あり物件を広告する際のポイント

不動産広告は、不当景品類及び不当表示防止法に基づいたルールを遵守する必要があります。違反した場合は、その度合いに応じて注意や警告、違約金が課されるといった罰則を受けることになるため、さまざまな観点からどのように掲載すべきかを検討することが大切です。
ここでは、広告内容の適性、消費者の誤解防止、プライバシー保護など、告知事項あり物件を広告する際のポイントについてご紹介します。
広告表示の義務について確認する
広告表示にあたっては、不当景品類及び不当表示防止法に基づいたルールを遵守する必要があります。明示しなければならない事項は明記し、ルールとして定められている「不当な表示」に抵触しないように注意しましょう。
なお、告知事項は契約が成立するまでに告知する義務がありますが、不動産の広告紙面に掲載する義務はありません。ただし、顧客からの信頼を失わないためにも、告知事項がある場合は、その旨を明記しておいた方がよいでしょう。
告知事項の内容を明記する
告知事項がある物件は、ウェブサイトやポータルサイト、販売図面などに明記するようにしましょう。その際の表記として「告知事項あり」「瑕疵物件」「建築制限あり」などが一般的に使われますが、広告においてもプライバシーへの配慮は欠かさないようにします。
また、広告を見た消費者から表記についての問い合わせがあった場合は、告知事項についての詳細かつ正確な説明が必要となります。
適切な広告媒体を選択する
不動産を広告する場合、新聞折り込み広告やホームページなどインターネット上での広告、ポスティングチラシなど、さまざまな広告媒体が考えられます。
それぞれの媒体によって、集客効果やターゲット層が異なります。告知事項がある物件を紹介するのに、適した広告媒体を選ぶようにしましょう。
例えば、同じ生活圏内で需要がある物件であれば、新聞折込やポスティングチラシが向いています。もし広範囲の消費者に広告したい場合は、ホームページ上や不動産サイトへの掲載を検討しましょう。
消費者目線のコミュニケーションを心がける
告知事項のある物件を消費者へ紹介する際は、消費者の立場に立ったコミュニケーションを心がけましょう。
専門的な用語ではなく、わかりやすい言葉を使うことも大切です。誠実な対応をすることで、信頼関係の醸成につながり、その後の打ち合わせのスムーズな進行につながるはずです。
また、消費者や不動産会社から問い合わせや質問を受けたときは、告知事項に関する資料やエビデンスがあれば書面を提示しながら説明するなどし、相手側の理解が深まるように配慮することも大切です。
不動産広告のクラウドツールを活用する
告知事項あり物件も含めた不動産広告の管理運用は、複数サイトへの一括入稿・編集ができるクラウドツールの利用がおすすめです。
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「告知事項あり」物件の取り扱いポイントを把握しよう

告知事項あり物件は、買主に心理的な抵抗を与えてしまうこと、法的な義務・トラブルリスクなどがあることから敬遠されることも少なくありません。しかしそれ故、比較的リーズナブルな価格で取引されることも多く、法令を遵守し、顧客目線の適切な対応によって、有益な取引につながる可能性もあります。不動産取引に携わる際には、告知事項に関する正確な情報開示、そして専門知識に基づいた適切なアドバイスが重要です。単に情報を開示するだけでなく、告知事項の種類や程度、物件の状況、周辺環境などを総合的に判断し、消費者に寄り添った丁寧な説明を心がけることがポイントといえるでしょう。
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