不動産デベロッパーとは、マンションや宅地開発、商業施設やオフィスビルの開発の中心となる存在です。魅力的な仕事ではありますが、どのような仕事内容なのかがよくわからないという方も多いかもしれません。しかし、不動産業界で起業するにあたって、不動産の業態の1つであるデベロッパーについて理解を深めておく必要があります。
そこで今回は、不動産デベロッパーの種類や事業内容、今後の展望などについて解説していきます。
不動産デベロッパーとは?
不動産デベロッパーとは、マンションやビル、街全体の不動産開発を担う専門業者です。メーカー系や商社系、独立系などの企業に分かれており、それぞれ異なる特徴を有しています。
デベロッパーは、ゼネコンと似ていますが、ゼネコンは不動産建設の請負をメインで行っていることが相違点です。建設元請けの大手業者という意味で使われる場合もあります。
同様にハウスメーカーは、住宅やマンションの販売、マンション・アパートの賃貸事業などを行い、収益を得ています。個人を対象にした事業をメインに行っているのがハウスメーカーです。
この3つは、似ているようで異なる事業を行っています。事業自体は異なりますが、お互いに協力し合っている部分もあるので、切り離して考えることはできません。
デベロッパーの種類について
デベロッパーには、総合デベロッパー、専門デベロッパー、公的デベロッパーといった種類があります。ここでは、それぞれの違いについて解説していきます。
総合デベロッパー
総合デベロッパーは、商業施設や公共施設、オフィスビル、工場、住宅などの規模が大きい物件を取り扱っています。街を構成する不動産を幅広く手掛けているので、1つの街を創り上げるような事業に携わるケースも見られます。
規模が大きい開発、総合的な街づくりに携われるといった点は、総合デベロッパーならではのメリットです。企業や土地のオーナーなどと関わることもあり、地域・社会に影響を与える存在だといえるでしょう。仕事内容は多岐にわたるので大変ですが、その分やりがいも大きいはずです。
専門デベロッパー
専門デベロッパーは、特定の事業に特化して開発をしている企業を指します。専門デベロッパーの中には、マンションの企画・開発に特化したマンションデベロッパー、オフィスビルの企画・開発に特化したオフィスデベロッパーなどがあります。それぞれ特定の分野に特化しているため、専門性が高いことが特徴です。
公的デベロッパー
公的デベロッパーは、都市の再生や生活インフラが不十分なエリアの整備を手掛けています。地域によっては、生活インフラが不十分なエリアもあることから、公的デベロッパーの役割は非常に重要だといえます。
不動産デベロッパーの事業内容について
不動産デベロッパーについて理解を深めるためには、事業内容の把握が欠かせません。ここでは不動産デベロッパーの事業内容について解説していきます。
再開発事業
再開発事業は、インフラ整備や商業施設開発、住宅エリアの拡充などを行う事業です。施設の開発だけではなく、道路や公園などの周辺の整備もあわせて実施し、当該エリアの街づくりに幅広く携わります。
その際、再開発エリアの住民との交渉もデベロッパーの仕事となります。トラブルを回避し、プロジェクトを円滑に進めるためには、双方が納得できるよう話し合いを重ねていく必要があります。
マンション開発事業
マンション開発事業は、マンションを建築し、販売する事業です。前述したマンションデベロッパーが行っています。
マンション開発では、立地条件や消費者のニーズなどを踏まえ、適切な間取りや広さを設定することが重要です。このようなマーケティングリサーチと分析を通じて、開発するマンションの方向性を明確にしていきます。
マンションを開発するためには、広い土地が必要になります。また、高層建築物になるパターンも珍しくないため、再開発事業と同様に、周辺住民との交渉や区画整理を適切に行うことが求められます。
素地取得
素地取得とは、開発する土地を取得することで、事業のスタートラインに立つために必要不可欠です。デベロッパーの社員は、常に不動産会社や行政などと連絡を取り、開発に適した土地に関する情報を収集しています。
土地の候補が見つかったら、簡易設計や見積もりを出し、事業の収支を計算します。採算性に目途がつけば、土地を取得し、建築工事がスタートするという流れです。行政主導の再開発などでは土地の取得には関わらず、設計や事業の管理責任者という立ち位置で委託を受けてプロジェクトに関わるケースもあります。
建築工事の管理
建築工事の管理も不動産デベロッパーの事業内容の1つです。不動産デベロッパーは、ゼネコンと建築工事を協業するケースも少なくありません。というのも、ゼネコンに建築工事を依頼した後も、事業主として建築物の品質や工事の進捗が適切に進んでいることを管理しなければならないからです。
事業価値を査定するためのマーケティング
事業価値を査定するためのマーケティングも、不動産デベロッパーが担う重要な仕事です。マーケティングは、一般的に商品の市場調査や販売戦略を練ることを指します。デベロッパーの場合は、マンションの販売価格や商業施設のテナント料の決定、入居者の集客やテナントの誘致などを行います。
マーケティングによってゴールイメージを明確化することで、事業をローンチするかどうかを決定できます。なかでも、販売価格やテナント料は、設定を誤ると思ったような成果が出せなくなるため、事業価値の査定を踏まえた適切な値付けが重要となります。
書類の手続きや管理
書類の手続きや管理は、法務や総務が担う仕事です。土地売買の契約、自治体や近隣住民との協議書、事業融資の契約など必要な書類は多岐にわたります。そして、それらは専門的な知識が必要になるので、専門の部署が対応・管理するケースが一般的です。
これらの契約は、高いレベルでの秘密保持や個人情報保護が求められるため、外部に委託することが難しい業務といえます。そのため、デベロッパー内に専門の部署を設け、専門的な知識を持つ人材が対応することが求められます。
営業販売
建築したマンションの販売、商業施設のテナント誘致などもデベロッパーの事業の1つです。
具体的には、Webサイトやパンフレットなどでの販促、広告展開による宣伝活動などが中心になります。オフィスビルなどのテナント誘致においては、入居した事業者にとってどのようなメリットがあるかなどを提案しながら営業活動を展開します。
これらの業務は、大手デベロッパーにおいては自社内もしくは自社グループで完結するケースが多いです。しかし、中小のデベロッパーの場合は、限られたリソースを有効活用するために外注することが多い傾向にあります。
不動産開発の現状と今後の展望
ここまで、不動産デベロッパーの種類や事業内容について解説しました。ここからは、不動産開発の現状と今後の展望について解説していきます。
不動産デベロッパーの現状について
不動産開発業の現状は、折からの人口減少に加えて、コロナ禍による生活者のライフスタイルの変化への対応など、難しい課題に直面しています。
少子化などの影響で、マンションの新規供給戸数は年々減少する傾向にあります。就業者人口の減少がさらに進めば、オフィス需要の低下なども考えられるでしょう。人口減少ならびに少子高齢化は、業界全体の大きな課題といえます。
また、2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大によって、生活者の暮らしやライフスタイルは大きく変容しました。オフィスや商業施設の需要が大幅に減少しただけでなく、テレワークやワーケーションといった新しい働き方が定着しています。このように、住宅・オフィスへのニーズが大きく変化しており、トレンドに応じた開発が求められているといえるでしょう。
不動産デベロッパーの今後について
人口減少や少子高齢化で国内での成長戦略が描きづらくなるなか、海外進出に注力するデベロッパーが増加しています。
なかでも東南アジアは、人口増加による経済発展が見込まれており、住宅・商業施設・オフィスなどの開発を日本のデベロッパーが手掛けるというケースが今後さらに増えていくでしょう。
また、地球環境や社会の持続可能性(SDGs)への危機感の高まりに対する企業としての取り組みも今後さらに進んでいくはずです。土地開発、街づくりなどにおいて、持続可能性も意識した事業の推進がさらに広がっていくことが予想されます。
不動産開発業は、時代の変化に合わせて進化し続け、今日に至っていると言っても過言ではありません。今後も生活者のニーズに対応し、社会の課題を解決しながら、競争力を高めていくことが求められます。
不動産デベロッパーに求められる力
不動産デベロッパーには、決断力やマネジメント力、チームワークなどが求められます。最後に、なぜそのような力が求められるのかを見ていきましょう。
決断力
不動産デベロッパーは大きなプロジェクトを動かすため、決断力が必要不可欠です。金額が大きくなるとその分慎重に判断すべきではないかと考えるかもしれませんが、スピード感がないと競合他社に先を越されてしまう可能性が高まります。
また、土地の価格や建設費は、経済状況や社会情勢による影響をダイレクトに受けてしまいます。そのため、決断が遅れることで絶好の買いどきを逃してしまう可能性もあるでしょう。チャンスを逃さないようにするためには、市場調査のデータに基づいた的確な情報分析を行い、根拠を持って迅速に決断することが重要です。
マネジメント力
不動産デベロッパーは、プロジェクト全体の管理をしなければいけないので、マネジメント力も必要になります。大規模な開発事業では、業務を分担して複数のプロジェクトが同時進行で行われます。1チームでも遅れが出てしまうと、開発事業全体に影響を及ぼしかねません。
マネジメントにおいては、資金やリソースの徹底した管理も必要不可欠です。決まった資金とリソースを最大限有効活用することが求められます。円滑にプロジェクトを進めるためには、高いマネジメント力が欠かせません。
交渉力
不動産デベロッパーは、開発用地を取得する際に土地の所有者と交渉するため、交渉力の高さも重要だといわれています。交渉がまとまらないと開発に適したエリアを取得できず、プロジェクトに支障をきたしてしまうためです。
また、開発予定エリアに居住者がいるケースも珍しくありません。大型商業施設や高層マンションができたことによって、生活が一変する可能性があります。そのため、デベロッパーは周辺住民に対する丁寧な説明も行わなければなりません。
交渉力が乏しいと住民の理解を得られず、場合によってはトラブルになる可能性があります。
不動産デベロッパーは生活に欠かせない存在
不動産デベロッパーは、再開発を通じた街づくりなど、私たちの生活に欠かせない事業を行っています。総合デベロッパー・専門デベロッパー・公的デベロッパーといった種類があり、それぞれ担う分野が異なっていることも、把握しておく必要があるでしょう。
不動産会社を起業するのであれば、不動産デベロッパーと関わる可能性もあるため、理解を深めておくことが重要です。将来的にデベロッパーとして業界で活躍したいという思いがあるなら、しっかりと事業内容を理解しておき、必要な能力を養っておきましょう。